記帳代行の選び方
記帳代行サービスの利用にあたり、どこにアウトソースすべきかを迷われる場合も多いと考えます。結論としては、税理士や税理士法人にアウトソースすることが、もっとも合理的であり効果的です。とはいえ、どの税理士や税理士法人にアウトソースしても、そこで得られる効果が同じであるのか、というと、もちろんそうではありません。税理士や税理士法人によって、サービスの内容や品質、そして料金体系が大きく異なります。そこで、記帳業務を税理士事務所や税理士法人にアウトソースする場合にチェックしておきたいポイントをご案内します。
① 料金体系はどうなっているのか
記帳代行サービスという業務の性格から、仕訳数を基準とする料金体系が多く見られます。具体的には、仕訳あたりの基本となる料金があり、ここに請求書や領収書などの証憑の共有方法や、お急ぎの場合の特急料金など、オプション料金が加算されることが一般的です。記帳業務は税務業務と関係性が深く、これらの業務を明確に分離することは現実的ではありません。これに対して、税務業務の取り扱いは、法令により税理士に限られ、無資格者は税務業務が取り扱えません。そのため、記帳業務のアウトソース先としては、税理士や税理士法人に限定されます。
一方で、顧問税理士という言葉にも見られるように、税理士や税理士法人への本来的な依頼は、税務顧問であって記帳代行ではないともいえます。そこで、税理士や税理士法人に記帳業務をアウトソースする場合、記帳代行と税務顧問で、それぞれ具体的にどのようなサービスが提供され、それぞれどのような料金体系となっているかなど、サービスの内容と内訳を確認する必要があります。
また、税理士や税理士法人によっては、記帳代行や税務顧問のほかにも、税務や経営財務を切り口としたコンサルティングサービスを提供しています。まず、貴社にとって、いま何が必要であり、どのようなサービスの提供を受けるべきなのかを明確にしましょう。そのうえで、記帳代行や税務顧問、さらにはそれ以外のサービスの、どこまでをどれだけの料金で依頼するのか、これらが貴社にとって具体的にどのような効果やメリットをもたらすのか、そこには十分な費用対効果があるのかなど、選択にあたって、個別具体的な提案を受けることをおすすめします。
② 丸投げすることはできるのか
テントゥーワンでも丸投げを請け負っていますが、私たちは次の点などを事前にお客さまと議論し、必要な代行業務を適切な費用で展開することを大切にしています。
記帳代行サービスには丸投げというサービスも多く見られます。しかし、丸投げは、アウトソース先の投下時間の増加につながり、それは、アウトソースの料金が高くなる結果にもつながります。例えば、何も整理していない請求書や領収書などの証憑を、そのままアウトソース先に丸投げすると、オプション料金が追加されることもあります。どこからどこまでの範囲で記帳業務をアウトソースすべきかを明確にし、その範囲に応じた料金がいくらであるのかを確認する必要があります。丸投げですべてコミコミだから良いという判断ではなく、コミコミのなかに、料金を払ってまでアウトソースする必要がない業務が含まれていないか、また逆に、アウトソースしようとする業務がオプションになっていないかなどの確認が必要です。
また、丸投げするにしても、丸投げする方法やルールを、事前にしっかりと整理しておかないと、記帳代行サービスの成果物でもある月次試算表や年次決算書、さらにその先にある税務申告書の不良を招くことにもなりかねません。
月次試算表で適切な経営判断ができない、年次決算書で金融機関からの評価や協力が得られない、税務調査で大きな指摘や追徴課税を受けるリスクが生まれるなど、丸投げが却ってサービスの質を低下させないよう、丸投げだから大丈夫という判断ではなく、事前の確認や整理に注意が必要です。
③ サービスの利用で手間はどうなるのか
まず、アウトソースしようとする先が対応できる、会計ソフトの範囲を確認すべきです。アウトソースしようとする先と議論を進めた結果、その終盤で、現在利用する会計ソフトには対応できない、それを変更するための手間が必要である、などの問題が発覚すると、それまでの議論が無駄です。もちろん、記帳代行サービスを提供する税理士や税理士法人がおすすめする会計ソフトがあって、それが、いまの会計ソフトよりも優れた機能があるなど、会計ソフトの変更にメリットがある場合もあります。この場合、会計ソフトを変更するときの手間やコストと、変更することにより得られるメリットとを、明示する比較資料の提供を受けて判断しましょう。
次に、記帳代行サービスを提供する税理士や税理士法人のITリテラシーが高くないと、請求書や領収書などの証憑を共有することに対して、貴社の手間や負担が軽減されず却ってそれが増加し、記帳代行サービスに期待するメリットを十分に得られないこともあります。記帳代行サービスに必要となる書類やデータを共有するにあたり、貴社の手間や負担がどうなるのか、クラウド型の会計システムをはじめ、このような手間や負担を軽減し、業務効率を高める方法の提案があるのかなども確認しましょう。
記帳代行の料金相場
記帳代行サービスの料金相場は100仕訳あたりで8,000円~10,000円です。しかし、思ったサービスではなかった、と後悔されないように、次の2点には、とくに注意が必要です。
① 記帳業務をアウトソースするための書類やデータなどの証憑を、どのように共有するのかによって、大きく料金が異なる場合があります。例えば、何も整理していない請求書や領収書などの証憑を丸投げするような方法を選択される場合には、これらの証憑を整理するためのオプション料金が発生する場合もあります。そもそも紙の共有や整理がコストになるならば、電子化によるデータ共有が有効です。そのため、クラウド型の会計システムにも十分に対応できるアウトソース先を探すという方法も有効な手段です。
② 残念ながら、専門家であったとしても、ずさんな記帳業務はあり得ます。ずさんな記帳業務に陥ると、金融機関からの評価や協力が思ったように得られない、税務調査で大きな追徴課税にあうなど、ときには深刻な問題も発生します。本来、記帳業務と税務業務とは別々の業務ですが、これらは不可分の隣接業務でもあります。また、記帳業務のその先には、決算業務や税務申告業務が待っています。意図せず金融機関との関係性が悪化することや、税務調査で思わぬ大きな追徴課税にあい想定外の資金支出に窮することなどは、専門家に記帳業務をアウトソースする以上、絶対に避けたいところではあります。このような問題を避けるためにも、記帳代行サービスの利用を検討する場合、まずは、税理士や税理士法人を検討すること、つぎに、その税理士や税理士法人の税務調査の実績を具体的に確認することをおすすめします。
注意すべきポイント
ここまで、記帳業務をアウトソースする先の選び方や料金相場についてご案内しました。ここからは、その選択において後悔しないように、ご注意いただきたい最低限のポイントをご案内します。
① 税務申告業務までをカバーできるのか
記帳代行サービスそのものは、経験がなくとも無資格であっても提供できるサービスです。しかし、記帳の主な目的は、「正しい数字」をもとに適切な経営判断することにあり、会社の数字に対して金融機関からの理解や協力も得て、のちの税務調査で指摘や追徴課税を受けない適切な税務申告をすることにあります。
貴社の記帳にはじまる月次試算表や年次決算書が妥当であるのかを、貴社で評価することは容易なことではありません。そもそも、貴社の数字に関して明確に比較・対比する情報はなく、金融機関や税務当局がどこを見るのかという専門的知識やノウハウがなければ、貴社による貴社の評価は困難です。それゆえ、記帳で不適切な処理が行われていたとしても、貴社では、これに気付かない場合もあり得ます。仮にも、実務経験やノウハウが十分ではない会社に記帳業務をアウトソースすると、記帳やその結果が不適切となるリスクが高まります。
また、記帳業務は税務業務と関係性が深く、これらの業務を明確に分離することは現実的ではありません。これに対して、税務業務の取り扱いは、法令により税理士に限られ、無資格者は税務業務が取り扱えません。仮に、あまりにも安い料金体系にのみ魅かれ、その料金のみを判断要素とした場合、経営者の視点からも、金融機関の視点からも、「正しい数字」という良い結果を得られないこともあります。
さらに、税理士や税理士法人ではない無資格者に、記帳代行サービスをアウトソースした場合、これとは別に、税理士や税理士法人に対して税務顧問業務や税務申告業務を依頼する必要があります。こうなると、無資格者である記帳代行サービスを提供する会社と、税理士や税理士法人との契約を並走させることにもなりかねず、記帳代行サービスは安いものの、税理士や税理士法人に対する報酬までを含めると、別々に依頼することが却って割高となることもあります。却って割高というデメリットのみならず、関連性の深い記帳業務と税務業務とを、別々に並走することから、業務の効率性が良いとはいえず、その結果に満足できる確率も低くなるといえます。
総合的な料金体系の視点からも、業務効率性の視点からも、経理業務は、税務申告業務までをカバーできる税理士や税理士法人にアウトソースされることが望ましいといえます。
② あとあとの損失やリスクまでを含めて料金を考える
Webサイトで安価な料金体系が示される場合であっても、安価に見える月額基本料金に、様々なオプションが追加される結果、あとあと想定よりも料金が割高だと感じることも少なくありません。そのため、記帳代行サービスの利用を検討する場合には、オプションを含んだ個別具体的な見積もりと提案を受けるべきです。安かろう・悪かろう、という考え方が正しい場合もあります。つまり、実務経験やノウハウが十分ではない会社であるがゆえ、無資格者であるがゆえ、料金体系が安価に示される場合もあります。
「正しい数字」という記帳の結果を得ることができず、適切や経営判断ができないこと、金融機関と良好な関係が築けないこと、税務調査で追徴課税を受けることなど、あとあとの損失やリスクまでをコストと捉えて、料金の是非を考えるべきではないでしょうか。
③ 守秘義務を確認する
記帳業務をアウトソースする先と共有すべき貴社の情報は、重要な情報であって、これが外部に漏洩することは極めて大きな問題となります。少なくとも、アウトソースしようとする専門家との契約で守秘義務が明示されているのか、共有する重要な情報の取扱いはどうなるかなどを、事前に確認しておく必要があります。
この点、税理士や税理士法人の場合、当事者間の契約以前に、法令で守秘義務の定めがあります。しかし、無資格者である場合には、法令がなく、契約でこれを明示するほかありません。守秘義務という点からも、税理士や税理士法人にアウトソースすることが望ましいといえます。
記帳代行に強い専門家の選び方
ここまで、記帳代行サービスの利用を検討するにあたり、注意すべきポイントをご案内しました。記帳業務は税務業務と関係性が深く、これらの業務を明確に分離することは現実的ではありません。そして、税務業務を行えるのは、税理士や税理士法人だけであること、さらには税理士や税理士法人には法令で守秘義務が定められていることをご案内しました。
これらを踏まえて、記帳業務をアウトソースするのであれば、税理士や税理士法人に対して依頼することが望ましいという結論をご案内しています。であれば、税理士や税理士法人であればどこでも良く、そのなかでも料金が安い税理士や税理士法人を選ぶべきか、というと、そうとは一概にいえません。どのような事業や産業であっても、安さには理由があります。
また、安かろう・悪かろう、という考え方を完全に否定することはできません。安さの理由が、アウトソースしようとする税理士や税理士法人の経営努力や工夫にあり、クラウド型の会計システムを駆使するなど業務効率化が追究されているから、ということならば、たちまち、安かろう・悪かろう、にはなりません。もちろん、クラウド型の会計システムなどによって業務が効率化されている効果は、請求書や領収書などの証憑を提供する貴社にも及びます。情報共有の手段が効率化されていれば、そのための手間や負担も、もちろん軽減されます。
さらに、アウトソースしようとする税理士や税理士法人に豊富な実績があることも、重要な判断要素です。とくに、税理士や税理士法人の業務の結果が評価される税務調査において、これまでどの程度の申告是認があったのか、を具体的に確認することも有効です。申告是認とは、税務調査の結果、申告内容に問題がなく修正等すべき事項がない場合のことをいいます。
記帳業務という重要な業務をアウトソースしようとする先との相性の良し悪しも、大切な判断要素でしかありません。そのため、最終的な判断の決め手を得るために、まずは個別具体的な相談と提案というプロセスを経て、そのうえで「一緒にビジネスを進めていきたい」と感じられるパートナーをお探しになられてはいかがでしょうか。
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