「経理業務、誰かに任せたいけど、本当に大丈夫かな?」

「業務委託って費用が高いんじゃないの?」

このような疑問をお持ちの経営者の方や経理担当者の方へ。近年、経理業務を外部に委託する企業が急増しています。特に中小企業やスタートアップにとって、経理業務の効率化は喫緊の課題です。

本記事では、経理業務委託のメリット・デメリットから、気になる費用相場、そして失敗しない委託先の選び方まで、税理士の視点から徹底的に解説します 。これを読めば、あなたの会社にとって経理業務委託が最適な選択肢なのか、具体的なイメージが掴めるはずです。

【監修:税理士・中小企業診断士 前田 直樹】

目次

1:経理の業務委託を検討する企業が増えている理由

1-1. 深刻化する人手不足と採用難

近年、労働人口の減少に伴い、経理人材の確保はますます困難になっています。特に専門知識が求められる経理部門では、経験豊富な人材の採用は競争率が高く、中小企業にとっては大きな負担です。

このような状況下で、自社で経理人材を抱えるのではなく、外部の専門家に業務を委託することで、採用コストや人件費を抑えつつ、必要な業務をカバーしようとする企業が増えています。

1-2. 法改正による経理業務の複雑化

2022年の電子帳簿保存法改正による猶予期間が2024年1月に終了し、また2023年10月にはインボイス制度が導入されるなど、近年、税制や会計に関する法改正が相次いでいます。これらの法改正は、経理業務に大きな変化と複雑性をもたらしており、常に最新の情報に対応できる専門知識が求められます 。

実際に、テントゥーワングループのクライアントからも、これらの法改正への対応について多くのご相談をいただいています。専門知識を持つ外部のプロに委託することで、法改正への確実な対応と、自社の経理担当者の負担軽減を図るという動きが加速しています。

1-3. コア業務への集中と生産性向上

バックオフィス業務である経理は、企業の経営を支える重要な役割を担いますが、定型業務が多く、時間がかかります。これらの業務に多くのリソースを割くことで、本来集中すべき事業の「コア業務」への注力が疎かになってしまうという課題を抱える企業も少なくありません。

経理業務を外部に委託することで、社員がより付加価値の高い業務や売上に直結する活動に集中できるようになり、結果として企業全体の生産性向上に貢献します。

1-4. DX推進の波と多様な働き方への対応

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が叫ばれる中で、経理部門もデジタル化・効率化が求められています。クラウド会計ソフトや経費精算システムの導入は進むものの、その運用やデータ連携には専門知識が必要です。

また、リモートワークや柔軟な働き方が普及する中、経理業務も場所に縛られない形で遂行できる体制が求められています。業務委託は、これらのDX推進や多様な働き方への対応をスムーズに進める手段としても注目されています。

2:経理を業務委託する5つのメリット【効果別に解説】

経理業務を外部に委託することで、企業は多岐にわたるメリットを享受できます。ここでは、その中でも特に重要な5つのメリットを、具体的な効果と合わせて解説します。

2-1. 【コスト削減】人件費・採用費・教育費の大幅カット

自社で経理担当者を雇用する場合、給与や賞与だけでなく、社会保険料、福利厚生費、採用活動費、さらには入社後の教育費用など、目に見えないコストが膨大にかかります。

経理を業務委託すれば、これらの固定費を変動費化できるため、トータルでのコスト削減に繋がります。特に、業務量が時期によって変動する企業(例:繁忙期のみ業務量が増える場合)にとっては、人件費の無駄をなくし、効率的な経営を実現できます。

2-2. 【業務効率化・生産性向上】コア業務への集中

経理業務は、伝票処理、記帳、給与計算、振込作業など、定型的でありながらも時間と手間がかかる作業が多いです。これらの業務を外部に委託することで、自社の従業員は本来注力すべき営業活動や商品開発、顧客対応といったコア業務に集中できます。

結果として、社員一人ひとりの生産性が向上し、企業全体の売上向上や事業拡大に大きく貢献するでしょう。テントゥーワングループのクライアントでも、経理業務をアウトソーシングしたことで、営業担当者が顧客訪問に時間を割けるようになり、売上が前年比15%向上するようなこともありました 。

2-3. 【専門性の確保】正確な処理と最新法令への対応

経理業務には専門的な知識が必要であり、特に税法や会計基準は頻繁に改正されます。自社で最新情報を常にキャッチアップし、正確に業務に反映させるのは容易ではありません。

業務委託の場合、委託先の多くは税理士や専門の経理代行会社であり、常に最新の法令に対応した専門知識と豊富な経験を持っています。これにより、誤った処理による税務リスクを回避し、正確で信頼性の高い経理処理が実現できます。

2-4. 【属人化の解消】担当者不在のリスクを軽減

経理業務が特定の担当者に集中している「属人化」は、その担当者が急病や退職などで不在になった際に、業務が滞る大きなリスクを伴います。最悪の場合、事業運営に支障をきたす可能性もあります。

業務委託サービスを利用すれば、複数のスタッフで業務を分担したり、組織的な体制でサポートを受けられるため、特定の担当者にしか業務がわからない『属人化』を防ぎ、担当者不在によるリスクを大幅に軽減できます。

2-5. 【ガバナンス強化】不正防止と経営の透明性向上

経理業務は会社のお金の流れを管理する要であり、内部統制の甘さは不正発生のリスクを高めます。

外部の専門家が経理業務を行うことで、社内とは異なる第三者の視点が加わり、内部牽制が強化されます。これにより、経費の不正利用や会計処理の誤りを発見しやすくなり、企業のガバナンス強化と経営の透明性向上に繋がります。

3:良いことだけじゃない!知っておくべき3つのデメリットと対策

経理業務委託には多くのメリットがありますが、当然ながらデメリットも存在します。これらのデメリットを事前に理解し、適切な対策を講じることで、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。

3-1. デメリット1:情報漏洩のリスクと対策

会社の財務情報や従業員の給与情報は、非常に機密性の高い個人情報です。これを外部に委託することに、情報漏洩のリスクを感じる方もいるでしょう。

対策

  • 機密保持契約(NDA)の締結: 委託先とは必ず機密保持契約を締結し、情報の取り扱いについて明確な取り決めを行いましょう。
  • セキュリティ体制の確認: 委託先がどのようなセキュリティ対策(情報管理体制、従業員教育、システムセキュリティなどを講じているか、事前に確認することが重要です。

3-2. デメリット2:コミュニケーションコストの発生と対策

社内にいる経理担当者とは異なり、業務委託の場合は外部の担当者とのコミュニケーションが必要になります。指示の出し方や情報共有が不十分だと、認識のずれが生じ、かえって手間が増える可能性があります。

対策

  • 密なコミュニケーション: 定期的なオンラインミーティングやチャットツールを活用し、こまめに状況を共有し、疑問点を解消しましょう。
  • 窓口の一本化: 委託先との連絡窓口を社内で一人に絞り、情報の一元化を図ることで、混乱を防ぎます。
  • マニュアルの整備: 業務のルールや特殊な処理については、事前に分かりやすいマニュアルを作成し、委託先と共有することで、スムーズな連携が可能です。

3-3. デメリット3:業務理解のギャップと対策

自社の細かな商習慣や業界特有のルールなど、外部の委託先が最初から全てを理解しているわけではありません。この業務理解のギャップが、期待通りの成果に繋がらない原因となることがあります。

対策

  • 詳細なヒアリングと擦り合わせ: 契約前に、委託したい業務内容、現在の業務フロー、自社の特性などを細かく伝え、委託先がどこまで対応可能か、どこからが対象外かを明確に擦り合わせましょう
  • 段階的な委託: まずは記帳代行など一部の業務から委託を開始し、委託先の能力や連携のスムーズさを確認しながら、徐々に業務範囲を広げていく「スモールスタート」も有効です。
  • 定期的なレビュー: 委託開始後も、定期的に業務内容をレビューし、認識のずれがないか、改善点はないかを確認し、適宜修正を加えていくことが重要です。

4:【料金表の例あり】業務委託の費用はどれくらい?料金体系と相場

経理業務委託の費用は、委託する業務内容、量、企業の規模、委託先の料金体系によって大きく異なります。ここでは、一般的な料金体系と相場、そして料金表の例をご紹介します。

4-1. 主な料金体系

  • 月額固定制: 毎月決まった料金を支払う形式。業務量が安定している場合に適しています。
  • 従量課金制: 処理した伝票枚数や仕訳数、従業員数など、業務量に応じて料金が変動する形式。業務量が不安定な場合に無駄なく利用できます。
  • ポット依頼: 年末調整や確定申告など、特定の時期に発生する業務のみを単発で依頼する形式。

4-2. 経理業務ごとの費用相場

業務内容 料金相場(月額)
記帳代行 30,000円~50,000円(仕訳数や売上規模で変動)
給与計算 10,000円~30,000円(従業員数で変動)
振込代行 5,000円~20,000円
経費精算代行 10,000円~40,000円(件数で変動)
決算・申告書作成 100,000円~300,000円(年額、売上規模や複雑性で変動)

※上記はあくまで目安であり、業務の難易度や量、委託先が提供する付加価値サービス(経営コンサルティング、節税対策など)の有無によって大きく変動します。

5:メリットを最大化する!失敗しない委託先の選び方と比較ポイント

経理業務委託の成功は、最適なパートナー選びにかかっています。ここでは、税理士として、あなたが委託先を選ぶ際に特に重視すべきポイントを解説します。

5-1. 【最重要】専門性と実績:税務・会計のプロかどうか

経理業務を委託する上で最も重要なのは、税務・会計に関する高い専門知識と豊富な実務経験を持つプロフェッショナルであるかどうかです。特に税理士は、税務の専門家であるため、記帳代行から税務申告まで一貫して任せられるという大きな強みがあります。

確認ポイント

  • 税理士資格の有無: 税理士が在籍しているか、または監修しているか。
  • 経験年数・実績: 経理代行や記帳代行の実績が豊富か、特に自社の業種での実績があるか。
  • 最新法令への対応: 電子帳簿保存法やインボイス制度など、最新の法改正に精通しているか。
  • 顧問先からの評判・事例: (可能であれば)実際の顧客の声や成功事例を確認する。

5-2. コミュニケーション体制と対応の柔軟性

どんなに専門性が高くても、コミュニケーションがスムーズでなければ、業務は円滑に進みません。

確認ポイント

  • 担当者の対応スピード: 問い合わせへのレスポンスが早いか
  • 定期的な報告体制: 月次や四半期で、業務進捗や財務状況の報告があるか。
  • 窓口の明確さ: 担当者が明確で、安心して相談できるか。
  • 相談への柔軟性: 経理以外の経営相談にも乗ってくれるか。

5-3. セキュリティ対策と情報管理体制

会社の機密情報を預けることになるため、情報セキュリティは非常に重要です。

確認ポイント

  • 具体的な情報管理方法: データの保管場所、アクセス制限、バックアップ体制などを確認する。
  • 従業員へのセキュリティ教育: スタッフへの情報セキュリティに関する教育が徹底されているか。

5-4. 料金体系の透明性と付加価値サービス

料金が明確で、追加料金が発生する可能性があるかどうかも確認しましょう。また、単なる業務代行だけでなく、どのような付加価値を提供してくれるのかも重要な比較ポイントです。

確認ポイント

  • 見積もりの明確さ: 料金の内訳が詳細に提示されているか。
  • 追加料金の条件: どこからが追加料金になるのか明確か。
  • 付加価値サービス: 経営相談、資金繰り支援、節税提案、DX導入支援など、経理業務以外のサポートがあるか。

5-5. 相性と信頼関係

最終的には、担当者との相性や、長期的な信頼関係を築けるかどうかが重要になります。最初の相談や打ち合わせを通じて、担当者の人柄や対応をよく見極めましょう。

「経理業務を委託する」ということは、貴社の会社の「お金」を預けるということ。つまり、単なる業務代行者ではなく、信頼できるビジネスパートナーを選ぶという視点が非常に大切です。特に税理士であれば、税務・会計の専門家として、経理業務だけでなく、貴社の経営全体をサポートする強力なパートナーとなるでしょう 。

6:メリット・デメリットを理解し、自社に最適なパートナーを選ぼう

経理業務の業務委託は、人手不足や法改正の対応、そしてコア業務への集中といった現代の企業が抱える多くの課題を解決し、経営効率を向上させる強力な手段となり得ます 。

コスト削減、専門性の確保、業務効率化、属人化の解消、ガバナンス強化といった多くのメリットを享受できる一方で、情報漏洩のリスクやコミュニケーションコスト、業務理解のギャップといったデメリットも存在します 。しかし、これらは適切な対策を講じることで十分に回避可能です。

重要なのは、これらのメリット・デメリットを十分に理解し、企業にとって最適な業務内容、そして最も信頼できるパートナーを選ぶことです。

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