固定資産。それは、事業活動の基盤を支える重要な資産であり、会社の財務状況を正確に把握する上で欠かせない要素です。しかし、中堅・中小企業の経営者や経理担当者の多くが、その 固定資産管理 の複雑さに頭を悩ませています。

「新しく購入した機械設備、どうやって帳簿につければいいんだろう?」「パソコンを買い替えたけど、古いパソコンの処分ってどうすればいいんだっけ?」「固定資産の棚卸しをしようと思っても、数が多すぎてどこから手をつければいいか分からない…」

固定資産管理は、日々の取引と異なり、発生頻度が少ないために管理が後回しにされがちです。しかし、その軽視こそが、財務上の大きなリスクとなり、経営判断を誤らせる原因にもなりかねません。

本コラムでは、長年、多くの企業様の財務支援に携わってきたテントゥーワン税理士法人としての知見に基づき、固定資産管理に潜む「落とし穴」と、それを確実に回避するための具体的な3つの対策を徹底的に解説します。貴社の経理部門が抱える課題を解決し、より正確で効率的な資産管理を実現するためのヒントをお伝えします。

目次

1. なぜ固定資産管理は経理の落とし穴となるのか

固定資産の管理は、単に物品の所在を把握するだけではありません。 減価償却税金 、そして 会社の財務健全性 に直結する重要な業務です。この管理が杜撰になると、以下のような深刻な問題を引き起こす可能性があります。

1-1. 正しい減価償却費が計算できない

固定資産は、時間の経過とともにその価値が減少していきます。この価値の減少分を費用として計上する手続きが 減価償却 です。減価償却費は、法人税や所得税の計算に直接影響します。

固定資産の取得価額、耐用年数、償却方法(定額法、定率法など)が正しく把握されていないと、正確な 減価償却費 を算出することはできません。その結果、

  • 過大な減価償却費の計上 : 利益が過少に見え、正確な経営判断ができません。
  • 過少な減価償却費の計上 : 利益が過大に見え、不必要な税金を支払うことになります。

特に、中小企業の場合、税務調査において、この減価償却費の計算ミスが指摘されるケースは少なくありません。正しい 仕訳 と計算方法を理解し、 固定資産台帳 に反映させることは、税務リスクを回避するために不可欠です。

1-2. 固定資産税の計算ミスにつながる

土地、家屋、償却資産(事業の用に供する機械、備品など)には、毎年 固定資産税(土地・家屋・償却資産に課される地方税(総称)) が課税されます。このうち、機械や器具、備品などの償却資産については、企業自身が市町村に対して申告を行う必要があります。

この申告の基礎となるのが、 固定資産台帳 です。 固定資産台帳 に記載漏れがあったり、除却・売却した資産の情報が更新されていなかったりすると、 償却資産税(固定資産税のうち、事業用の償却資産に課されるもの(固定資産税の一部)) の申告に誤りが生じます。

具体的には、

  • 申告漏れ : 申告すべき資産が漏れていた場合、後から追徴課税や延滞税が課される可能性があります。
  • 過大申告 : すでに除却・売却した資産を申告し続けていた場合、不必要な税金を支払い続けることになります。

これらのミスは、会社の余計な税負担を増やすだけでなく、税務署や市町村との信頼関係を損なうことにもつながります。

1-3. 資産の所在がわからなくなり、管理が非効率化する

会社の 固定資産 は、本社、支店、工場、営業所など、複数の場所に分散していることが一般的です。 固定資産台帳 上の情報と、 現物 の所在が一致しない状態は、経理業務の非効率化を招きます。とくに中小企業では、固定資産台帳の作成や更新を税理士に任せきりにしているケースも少なくありません。そのため、自社で台帳を確認したことがなく、「何が載っているのか分からない」「既に存在しない資産が残っている」といった事態も見受けられます。こうした状況は、後述する資産所在の不明や管理の非効率化をさらに深刻化させる要因となります。

  • 棚卸しの困難化 : 決算期に行う 固定資産棚卸し で、 資産現物 が見つからない、誰が使用しているか分からないといった事態が発生します。これにより、 棚卸し 作業が長時間にわたり、他の重要な業務を圧迫します。
  • 無駄な再購入 : 資産の所在が不明なため、実際には社内にある備品を再度購入してしまうといった、無駄なコストが発生します。

このような状況は、特に複数の事業所を持つ中堅・中小企業にとって、深刻な問題となりがちです。 資産管理 が徹底されていないと、会社の財産を正確に把握できず、ひいては経営の透明性を損なうことにつながります。

チェックしてみましょう!

  • 固定資産台帳の最終更新日が1年以上前になっていませんか?
  • 棚卸しで所在不明の資産が出ていませんか?
  • 過去に減価償却の計算で税務署から指摘を受けたことはありませんか?

2. 経理担当者が陥りがちな「固定資産管理の罠」とは?

ここまで、固定資産管理の不備が引き起こす問題について解説しました。では、具体的にどのような「罠」に経理担当者は陥りがちなのでしょうか。

2-1. 罠1:減価償却費の計算方法を間違えている

減価償却 の計算は、 取得価額耐用年数償却方法償却率 など、複数の要素を考慮する必要があるため、ミスが発生しやすいポイントです。特に、以下のようなケースで間違いが起こりやすいです。

  • 償却方法の選択ミス : 会社が採用している償却方法(定額法、定率法など)と異なる方法で計算してしまう。
  • 耐用年数の適用ミス : 資産の種類や構造によって定められた 耐用年数 を間違えて適用してしまう。特に、税制改正によって耐用年数が見直されることがあるため、最新の情報を把握していないとミスにつながります。近年では、DX投資促進税制や中小企業向けの特例措置など、新しい制度が次々と導入・改正されています。したがって、減価償却や固定資産税の計算にあたっては、必ず最新の法令や通達を確認することが欠かせません。
  • 期中取得・売却時の計算ミス : 事業年度の途中で 資産 を取得したり、 売却 したりした場合、月割り計算が正しく行われていない。
  • 少額減価償却資産の混同 : 10万円未満の 資産 や、30万円未満で一括償却できる 資産(少額減価償却資産の特例が適用される資産) など、少額の 資産 の処理方法を混同してしまう。

これらのミスは、 減価償却費 を過大または過少に計上し、 法人税 額に直接的な影響を及ぼします。

2-2. 罠2:償却資産税の申告漏れがある

償却資産税 は、企業が保有する有形 固定資産 の中でも、事業に供する機械、器具、備品などに課税される地方税です。この税金の申告は、1月末までに各市町村に行う必要がありますが、以下の理由で申告漏れが発生しやすいです。

  • 対象資産の認識不足 : パソコンやコピー機、サーバーなどの情報機器、製造設備、さらには看板や工具、器具備品など、 償却資産 に該当する範囲は多岐にわたります。経理担当者がその全容を把握していない場合、申告漏れが生じます。特に、リース資産や、取得価額が少額の 資産 を申告対象から外してしまうケースがあります。
  • 部署間の連携不足 : 営業や製造、IT部門などが購入した 資産 の情報が、経理部門に正確に伝わらない。 エクセル固定資産台帳管理 している場合、入力漏れや情報伝達の遅れが起こりやすくなります。

申告漏れが発覚すると、過去数年分に遡って追徴課税が行われるため、会社の資金繰りに大きな影響を与えかねません。

2-3. 罠3:帳簿と現物が一致しない「簿外資産」の発生

簿外資産 」とは、会社の帳簿には記載されていないものの、 現物 としては存在する 資産 のことを指します。これは、経理上の問題だけでなく、内部統制上のリスクにもつながります。実際の現場では、固定資産台帳の作成やメンテナンスを税理士任せにしている中小企業も少なくありません。その結果、経理担当者自身が台帳の中身を把握していない、既に存在しない資産が残っている、逆に資産が未登録のままになっている、といったケースが生じます。これが「簿外資産」発生の大きな要因となります。

  • 除却・廃棄の処理漏れ : 物理的に 廃棄除却 されたにもかかわらず、 固定資産台帳 から抹消する手続きが漏れてしまう。
  • 未登録の資産 : 購入したにもかかわらず、何らかの理由で 固定資産台帳 に登録されていない 資産 。これは、経理部門と各部署の情報共有が不十分な場合に起こりやすいです。
  • 売却・譲渡の処理漏れ : 資産を売却したにもかかわらず、帳簿上の 仕訳固定資産台帳 の更新がなされていない。

簿外資産 の存在は、会社の正確な財産状況を把握することを困難にし、 棚卸し 作業の非効率化や、不必要な税金の支払い、さらには不正のリスクにつながる可能性があります。

こんな症状が出ていたら要注意です!

  • 部署ごとに異なるルールで資産を管理している
  • 少額資産の処理方法が担当者によってバラバラ
  • 除却や売却の申請書が経理に届かず、台帳が更新されていない

3. 罠を回避!ミスを防ぐための3つの対策ポイント

固定資産管理の「罠」を回避し、正確かつ効率的な業務を実現するためには、以下の3つの対策を講じることが重要です。

3-1. 対策1:全社で管理ルールを統一し、情報共有を徹底する

固定資産の購入から廃棄、売却に至るまでの一連の流れを、全社共通のルールとして明確に定めます。特に、経理部門と現場の部署との連携を強化することが不可欠です。

具体的なルール例 :

  • 取得時のルール : 一定の 取得価額 を超える 資産 を購入する際は、必ず経理部門に申請し、 固定資産台帳 への登録を義務付ける。
  • 移動時のルール : 部署間で 資産 を移動させる際は、事前に経理部門に通知し、 台帳 の情報を更新する。
  • 廃棄・売却時のルール : 資産売却廃棄 が決定した際は、所定の申請書を経理部門に提出し、帳簿からの除却手続きを行う。

これらのルールを定めることで、情報が経理部門に集約され、 固定資産台帳 の正確性が維持されます。また、 資産現物 にも管理番号を付与することで、 棚卸し 時の確認作業が容易になります。

3-2. 対策2:固定資産台帳の定期的な棚卸しを実施する

物理的な 現物固定資産台帳 の情報を定期的に照合する 棚卸し は、簿外 資産 の発生を防ぎ、帳簿の正確性を保つ上で最も重要な作業の一つです。

  • 実施頻度 : 少なくとも年に一度は実施することを推奨します。四半期ごとや半期ごとなど、より高頻度で実施することで、問題の早期発見につながります。
  • 方法 : 管理番号やバーコードを活用し、 現物 をスキャンして情報を確認する方法が効率的です。また、部署ごとに 棚卸し 責任者を置き、現場と経理部門が連携して作業を進めることも重要です。
  • 結果の共有 : 棚卸し で発覚した差異( 現物 の有無、状態など)は、速やかに 台帳 に反映させ、経営層にも報告することで、会社の財産状況の透明性を高めます。

3-3. 対策3:管理システムを活用し、業務を効率化・自動化する

エクセル での 固定資産 管理は、手作業による入力ミスや計算ミス、情報の共有の遅れといったリスクを常に伴います。中堅・中小企業が抱えるこれらの課題を根本的に解決するには、 固定資産管理システム の導入が効果的です。

  • 自動化と正確性の向上 : システム に一度情報を登録すれば、 減価償却費 の計算、 仕訳 データの自動作成、 償却資産税 申告書の作成などを 自動化 できます。これにより、手作業による計算ミスを大幅に削減し、経理担当者の負担を軽減できます。
  • 一元管理と情報共有 : 複数の事業所や部署にまたがる 資産 の情報を、クラウドベースの システム で一元的に 管理 できます。リアルタイムで情報が更新されるため、全社的な情報共有がスムーズになります。
  • 現物管理の効率化 : バーコードやQRコード機能を活用することで、 棚卸し 作業が大幅に効率化されます。スマートフォンや専用端末でコードを読み取るだけで、 台帳 との照合が瞬時に行えます。

リース資産無形固定資産管理 にも対応した システム を選定することで、企業の 資産 全体を包括的に 管理 し、より正確な財務報告につなげることができます。

できていますか?チェックしてみましょう!

  • 固定資産の取得から廃棄まで、統一ルールが文書化されている
  • 少なくとも年1回は台帳と現物を突き合わせている
  • Excelではなく管理システムを部分的にでも導入している

4. まとめ:あなたの会社の固定資産管理は大丈夫?

固定資産管理 は、会社の財産を守り、正確な経営判断を行う上で不可欠な業務です。しかし、多くの企業がその複雑さから 管理 を後回しにし、 減価償却費 の計算ミス、 固定資産税 の申告漏れ、「 簿外資産 」の発生といった「落とし穴」に陥りがちです。

これらの「罠」を回避するためには、

  • 全社的な管理ルールの統一と情報共有
  • 定期的な固定資産台帳の棚卸し
  • 固定資産管理システムの活用

が有効な対策となります。

テントゥーワン税理士法人は、業歴40年にわたり、中堅・中小企業の経営を支援してまいりました。税務や会計の専門知識だけでなく、公認会計士や中小企業診断士の資格を持つスタッフが約50名在籍しており、経営全体の視点から最適な解決策を提案します。

特に、経理部門のDX推進やバックオフィス業務の効率化においては、豊富な知見と経験を有しています。固定資産管理システムの選定から導入支援、そして経理業務全体を見直す経理BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスまで、お客様の状況に合わせた最適なサポートを提供しています。

「現在の固定資産台帳で本当に大丈夫か不安だ」「より効率的な管理方法に切り替えたい」といったお悩みをお持ちであれば、ぜひ一度ご相談ください。貴社の固定資産管理を健全化し、より強固な経営基盤を築くためのパートナーとして、私たちが全力でサポートいたします。

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