「まさか、うちに限って…」

経理担当者が突然退職。中小企業の経営者であれば、一度はそんな悪夢のような状況を想像したことがあるかもしれません。日々の経費精算、給与計算、そして何より税務申告。どれも会社の存続に直結する重要な業務なのに、誰も引き継げない…そんなパニック状態に陥ってしまう企業は少なくありません。

「新しい人を雇うべきか?」「自分でやるしかないのか?」「そもそも何から手をつけたらいいのか?」

そんな時、あなたの会社の強力な味方になるのが「経理代行」です。このコラムでは、経理担当者の突然の退職という緊急事態に直面した中小企業の経営者が取るべき初動から、経理代行サービスを賢く活用し、さらにはこのピンチを経営改善のチャンスに変える方法まで、わかりやすく解説していきます。

【監修:税理士・中小企業診断士 前田 直樹】

目次

1:「経理担当が突然の退職!」その時、経営者がすべきこと

経理担当者が突然辞めてしまった場合、経営者としては目の前が真っ暗になるかもしれません。しかし、パニックに陥る前に、冷静に、そして迅速に「やるべきことの優先順位」を決めて行動することが肝心です。

1.1 まずは現状把握と緊急性の高い業務の特定

経理担当者がいなくなったからといって、会社の経理業務が完全にストップするわけにはいきません。特に以下の業務は、滞ると大きなリスクにつながるため、最優先で状況を把握し、対応策を講じる必要があります。

  • 給与計算と従業員への支払い: 従業員の生活に直結するため、最も緊急性の高い業務です。社会保険料や源泉所得税の控除漏れがないかなども確認が必要です。
  • 資金繰りに関する業務(売掛金・買掛金の管理、振込業務): 会社のキャッシュフローに直接影響します。取引先への支払いが滞れば信用問題に発展しかねませんし、売掛金の回収が遅れれば資金不足に陥る可能性もあります。
  • 税務申告・納税に関わる業務: 法人税、消費税、所得税など、税務申告には厳密な期限があります。これを過ぎると延滞税などのペナルティが発生し、会社の信頼も損なわれます。
  • 経費精算と領収書の整理: 日々の経費処理が滞ると、後にまとめて処理する際に大きな負担となり、税務調査時のリスクにもなりかねません。

これらの業務がどこまで進んでいて、何が未処理なのかを早急に確認しましょう。

1.2 絶対に避けるべきNG行動

緊急時だからこそ、冷静さを欠いた行動は避けるべきです。

  • 「とりあえず放置」: 一時的にしのいでも、問題は積み重なるばかりです。税務申告の遅延や取引先からの信用失墜など、取り返しのつかない事態に発展する可能性があります。
  • 「素人判断で処理」: 経理・税務は専門知識が必要です。誤った処理をしてしまうと、後で修正に膨大な手間とコストがかかったり、税務上の問題を引き起こしたりするリスクがあります。
  • 「後任探しに時間をかけすぎる」: 新しい経理担当者の採用は、時間もコストもかかる上、すぐに優秀な人材が見つかるとは限りません。その間にも業務は滞り続けます。

このピンチを乗り切るためには、専門家のアドバイスを早期に求めることが、最も賢明な選択と言えるでしょう。

2:緊急事態の解決策としての「経理代行」という選択肢

経理担当者の退職という緊急事態に直面した中小企業にとって、「経理代行」は非常に有効な解決策となり得ます。

2.1 経理代行とは?

経理代行とは、会社の経理業務の一部または全部を外部の専門業者に委託することです。「経理アウトソーシング」や「経理外部委託」とも呼ばれます。

「経理代行」と聞くと、単に記帳作業だけをイメージするかもしれませんが、そのサービス範囲は多岐にわたります。具体的には以下のような業務を依頼することが可能です。

  • 記帳代行: 日々の取引を会計ソフトに入力し、帳簿を作成する業務。
  • 給与計算: 従業員の給与、賞与、社会保険料、所得税などの計算と処理。
  • 振込代行: 買掛金や経費、給与などの銀行振込業務。
  • 請求書発行・管理: 顧客への請求書発行と、売掛金の管理。
  • 年末調整・法定調書などの代行: 従業員の年末調整業務や、税務署への提出書類などを作成する業務
  • 月次・年次決算書の作成補助: 月次試算表や年次決算書の作成をサポート。
  • 経費精算のサポート: 従業員の経費精算業務を支援。

経理担当者の退職で困っている経営者の方々が「何をしていいか分からない」と感じている業務の多くを、経理代行サービスでカバーできることがお分かりいただけるでしょう。

2.2 なぜ「経理代行」が緊急時に強いのか

経理担当者の退職時に経理代行が有効なのは、以下の理由からです。

  • 即座にプロのサポートを受けられる: 人材採用のように時間がかからず、専門知識を持ったプロがすぐに業務を引き継いでくれるため、業務の停滞を最小限に抑えられます。
  • 採用コスト・教育コストの削減: 新しい経理担当者を雇う場合、求人広告費、採用活動費、入社後の教育コストなどが発生します。経理代行ではこれらのコストが不要です。
  • 属人化リスクの解消: 経理代行は組織として業務を請け負うため、担当者の急な退職による業務停滞のリスクを回避できます。
  • 専門知識の活用: 税法や会計基準は頻繁に改正されます。経理代行業者、特に多くの税理士が、法改正に即した最新の知識で対応しており、正確な処理が期待できます。

3:経理代行は「担当者の穴」を具体的にどう埋めてくれるのか?

「経理代行で、本当に担当者の穴を埋められるの?」そう疑問に思う方もいるかもしれません。ここでは、具体的な業務のBefore/Afterをイメージして、経理代行がどのように企業のピンチを救うのかを見ていきましょう。

業務項目 経理担当者退職後の混乱期(Before) 経理代行導入後の安定期(After)
記帳業務 領収書や請求書が山積みに。何が未処理か不明。月次決算も停滞し、経営状況が見えない。 毎月決まった時期に正確な記帳が行われる。月次試算表が迅速に作成され、経営状況をタイムリーに把握できる。
給与計算 従業員への給与支払いが遅延するリスク。社会保険料や源泉所得税の計算ミスで従業員からのクレーム。 期日通りに正確な給与計算と支払いが行われる。法令順守で安心して従業員対応が可能。
税務申告 期限が迫っているのに、何から手をつけていいか分からない。誤った申告で追徴課税のリスク。 専門家が期限内に正確な申告書を作成・提出。節税のアドバイスも受けられ、不要な税負担を避けられる。
資金管理 売掛金の回収漏れや買掛金の支払い遅延が発生。突発的な資金ショートの不安。 債権債務の管理が適切に行われ、資金繰りの見通しが明確に。キャッシュフローの安定化。
経営判断 正確なデータがないため、勘に頼った経営判断に陥りがち。機会損失も。 タイムリーで正確な会計データに基づき、根拠のある経営判断が可能に。事業戦略の立案にも貢献。

上記のように、経理代行は単に業務を肩代わりするだけでなく、業務品質の向上経営の見える化、そしてリスクの低減といった多岐にわたるメリットをもたらします。

特に税理士が提供する経理代行は、単なる記帳作業にとどまりません。税務のプロフェッショナルとして、経理データに基づいた節税アドバイスや、経営改善提案も行われる場合があります。これにより、会社の財務状況を健全に保ち、持続的な成長をサポートすることが可能です。

4:緊急時にこそ慎重に!失敗しない経理代行サービスの選び方

「経理代行の必要性は分かったけど、どこに頼めばいいの?」という疑問をお持ちかもしれません。緊急時だからこそ、冷静に、慎重にサービスを選ぶことが重要です。

4.1 チェックすべき5つのポイント

  1. 専門性と実績があるか(特に税理士かどうか)
    • 経理代行は、税務や会計に関する専門知識が不可欠です。税理士が運営している経理代行サービスであれば、税法改正にも迅速に対応し、正確な処理が期待できます。
    • 中小企業支援の実績や、これまでの顧客対応事例などを確認しましょう。具体的な導入事例があれば、自身の会社に合うかどうかの判断材料になります。
  2. 対応業務の範囲は自社のニーズに合っているか
    • 記帳代行のみなのか、給与計算や振込代行まで対応してくれるのかなど、自社が委託したい業務を明確にし、サービス内容と合致しているかを確認しましょう。
    • 将来的に依頼したい業務(年末調整、月次決算サポートなど)がある場合は、それも対応可能か事前に確認しておくのがおすすめです。
  3. コミュニケーションはスムーズか
    • 経理業務は会社のお金に関わるデリケートな部分です。担当者との連絡が取りやすいか、質問に対する返答は迅速か、報告体制はしっかりしているかなどを確認しましょう。
    • 初回の問い合わせや無料相談の際の対応も、判断材料になります。
  4. 費用体系は明確か
    • 料金は、依頼する業務範囲や取引量によって変動します。明確な料金体系が提示されているか、追加料金が発生するケースはどんな場合かなどを事前に確認しましょう。
    • 安さだけで選ぶと、後でサービスの質が悪かったり、追加費用が発生したりする可能性もあります。費用対効果を総合的に判断することが重要です。
  5. 情報セキュリティ対策は万全か
    • 会社の機密情報や個人情報を預けることになるため、情報セキュリティ対策は非常に重要です。データの取り扱いに関するポリシーを確認しましょう。

5:急場しのぎで終わらせない!これを機に考える未来の経理体制

経理担当者の退職は、確かに大きなピンチです。しかし、これを単なる急場しのぎで終わらせず、会社の経理体制を見直す絶好のチャンスと捉えることができます。

5.1 経理代行導入後の「攻めの経理体制」

経理代行を導入することで、経営者や残された従業員は、日々の煩雑な経理業務から解放され、より本業に集中できる時間を確保できます。これは、会社の売上向上や新しい事業展開にリソースを集中できることを意味します。

また、プロである税理士などが経理を代行することで、以下のような「攻めの経理体制」を構築することが可能になります。

  • 経理業務の標準化と効率化: 属人化していた業務が専門家によって体系化され、より効率的なフローが確立されます。
  • 経営状況のリアルタイム把握: 毎月の正確な月次試算表などから、会社の財政状態や経営成績をタイムリーに把握し、迅速な経営判断が可能になります。
  • 適切な節税対策: 税務のプロが日々の取引をチェックすることで、税法に則った適切な節税アドバイスを受けられる場合があります。
  • 税務調査への対応力強化: 常に正確な帳簿が作成されているため、万が一の税務調査にも慌てることなく、スムーズに対応できます。

多くの成功している中小企業は、経理業務を外部のプロに任せることで、経営の効率化と専門性の向上を図っています。あなたの会社も、この機会に経理を「コスト」ではなく「経営を加速させる投資」と捉え直してみませんか?

6:突然のピンチを、経営改善のチャンスに変えよう

経理担当者の突然の退職は、中小企業にとって非常に大きな出来事です。しかし、このピンチを適切に対処し、経理代行サービスを賢く活用することで、これまで以上に強固で効率的な経営体制を築くことができます。

記帳、給与計算、税務申告…経理業務は、会社の“血液”とも言える存在です。滞ると経営機能全体が低下しかねません。「血液」のようなものです。この血液の流れが滞ると、会社の健康状態はあっという間に悪化してしまいます。外部の専門家に経理業務を任せることは、この血液の流れをスムーズにし、会社の生命線を守ることに他なりません。

突然のピンチを、貴社の経営改善、そしてさらなる飛躍のためのチャンスに変えるため、ぜひ一度、経理の専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。

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