iDeCoと選択型DCを比較、社会保険料削減スキームについて
iDeCoの魅力を再確認
いまいちどiDeCoとは
iDeCo(イデコ、正式名称「個人型確定拠出年金」)は、公的年金とは別に任意で加入できる私的年金のひとつです。
iDeCoに加入できるのは、原則、国民年金に加入している方で、加入区分により加入上限年齢が異なります。
加入後は自分で決めた掛金を積み立てて運用し、原則60歳以降に、年金や一時金として、
又はそれらを併用して老齢給付金を受け取ることができます。
3つの税制優遇が魅力
掛金の支払時、運用中、給付を受け取るとき、それぞれに税制優遇を受けることができます。
優遇① 掛金が全額所得控除
iDeCoの掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。
たとえば年間の掛金が24万円(月額2万円)で、所得税20%、住民税10%の場合、年間7万2,000円の税金が軽減されます。
なお、iDeCoと小規模企業共済は併用可能です。
どちらも高い節税効果が期待されるため併用がおすすめです。
優遇② 運用益が非課税で再投資も可能
一般的な金融商品は運用益が課税対象(源泉分離課税(税率年20.315%))となりますが、
iDeCoなら運用益も非課税で、再投資も可能です。
積立金に対して課税される特別法人税(税率年1.173%)についても、
平成11年(1999年)から現在に至るまで、その課税は凍結されています。
優遇③ 受け取るときも大きな控除
iDeCoの老齢給付金は、原則として60歳以降に年金又は一時金、
もしくは年金と一時金を併用して受け取ることができます。
年金として受け取る場合は公的年金等控除の対象に、一時金の場合は退職所得控除の対象になります。
転職・退職時も安心
たとえば、会社を退職して専業主婦(主夫)になったり、自営業に転職したりする場合でも、
引き続き「iDeCo」の加入者として掛金を拠出し、資産を運用できます。
また、転職して、iDeCoの年金資産を転職先の他の年金制度に移すこと(ポータビリティ)もできます。
【2025年度税制改正大綱】iDeCoの拠出限度額が大幅引き上げ
日本が抱える少子高齢化や公的年金財政の不安定性といった課題に対応し、
老後資産形成を支援するための重要な施策のひとつとして、
2025年度税制改正大綱にはiDeCoの拠出限度額を引き上げることが盛り込まれています。
拠出限度額の引き上げ
iDeCoや企業型DCの拠出限度額が大幅に引き上げられます。
・自営業(国民年金第1号被保険者)
月額6.8万円(国民年金基金と合算)➡月額7.5万円(国民年金基金と合算)
・企業年金のある会社員(国民年金第2号被保険者)
企業年金と合算で月額5.5万円(iDeCoは2万円が限度)
➡企業年金(確定給付企業年金ごとの掛金相当額及び企業型確定拠出年金の掛金額)と合算で月額6.2万円
(iDeCoの上限は撤廃)
・企業年金のない会社員(国民年金第2号被保険者)
月額2.3万円➡月額6.2万円
・扶養配偶者(国民年金第3号被保険者)
月額2.3万円で引き上げなし
加入可能年齢が70歳未満に
iDeCoの加入可能年齢が、現行の65歳未満から70歳未満へと拡大されます。
これにより、65歳以上でも引き続き掛金を拠出することができ、資産形成期間を延ばすことができます。
また、既にiDeCoに加入している方も加入期間を延長できることから、
ライフプランに合わせた柔軟な運用も期待できます。
なお、選択型確定拠出年金(選択型DC、企業型DCの拡張方式のひとつ)の加入年齢は70歳未満のまま据え置きです。
マッチング拠出の規制緩和
マッチング拠出では、これまで加入者の掛金が事業主掛金を超えないという制限がありましたが、この要件が廃止されます。
加入者が事業主掛金額を上回る掛金を拠出することができ、節税と老後資金の積み立てを加速できます。
一時金に対する退職所得控除の縮小
現在は、iDeCoや企業型DCを老齢一時金として受け取る場合、
5年経過してから退職金を受け取ると退職所得控除を重複して計算できます。
これに対し2026年1月からは、10年未満に退職一時金や他の企業年金の一時金を受け取ると、
退職所得控除を重複して計算できなくなります。
このような退職所得課税の強化によって、受取時の税制優遇を最大化するためのライフプランが一層重要となるといえます。
選択型DCとiDeCo、どっちがお得?
いまいちど選択型DCとは
選択型DCは、日本の企業型確定拠出年金制度のひとつで、従業員が運用方法を選択できる年金制度を指します。
「選択型」という言葉が示すとおり、従業員は企業からの掛金を受け取るか、
給与として現金で受け取るかを選択できる仕組みが特徴です。
つまり、会社から受け取る給与の一部を、将来の備えとするか、それともいまもらうのか、が選択できます。
これに対して、iDeCoは、会社や給与は関係なく、個人で任意で加入する制度です。
選択型DCとiDeCoの比較
選択型DCもiDeCoも、
①運用して増えた利益に対して非課税
②選択型DCの掛金は給与に含まれず、またiDeCoは所得控除の対象となり、所得税や住民税の節税が可能
③受取時には退職所得控除が利用できる点
が、共通するメリットです。
ただし、③のメリットでは、上述の退職所得課税の強化に注意が必要です。
選択型DCのメリット
選択型DCは、上述の共通するメリットに加えて、選択型DCの掛金が社会保険料算定の対象から外れるため、
結果として社会保険料を削減できるメリットが加わります。
一方、iDeCoには、このような社会保険料の削減メリットはありません。
選択型DCのデメリット
社会保険料は主に、①健康保険料、②介護保険料、③雇用保険料、④厚生年金保険料の4つで構成されます。
選択型DCで社会保険料を削減できるメリットは、
これらのうち①健康保険料、③雇用保険料、④厚生年金保険料の3つに対してデメリットともなります。
つまり、支払う保険料が少なくなる分、受取る年金なども少なくなるというデメリットです。
①健康保険料と③雇用保険料では、
出産手当金や傷病手当金の減少、失業手当や介護休業給付、育児休業給付の減少が具体的なデメリットです。
④厚生年金保険料では、将来受け取る老齢基礎年金が減少、遺族年金や障害年金の給付額にもマイナスの影響があり、
これらが選択型DCによる社会保険料削減の具体的なデメリットです。
社会保険料を削減することはメリットであり、一方でデメリットでもあることに注意して、
老後を含む有事の備えを、公的な手当に頼るのか(社会保険料は削減すべきでない)、
自ら手当するのか(社会保険料を削減すべきである)、これらのバランスを考えることが重要であるといえます。
社会保険料削減スキームが終わるのか?
社会保険料削減スキームとは
いわゆる社会保険料削減スキームは、合法的な社会保険料の削減対策として、
多くの中小企業の経営者や他の役員に利用されてきました。
しかし、国はこの制度を見直し、終了に向けた動きを進めています。
社会保険料削減スキームは、役員給与を調整することで、社会保険料の負担を大幅に減らすことができるものです。
具体的には、役員給与の総額を変えることなく、
役員報酬(定期同額給与)を極端に低く設定、役員賞与(事前確定届出給与)を大きく設定することで、
賞与にかかる社会保険料の上限を適用させ、支払う社会保険料を削減するという仕組みです。
たとえば、年収1,260万円の役員が、月々の役員報酬を5万円に設定、年1回大きな役員賞与を支給することで、
結果として、会社と役員ともに社会保険料の負担が大幅に引き下がります。
大幅に引き下がる理由は、賞与にかかる社会保険料に上限があり、
この上限を超える賞与には、社会保険料がかからないからです。
具体的に問題視される背景
このスキームが長年にわたり合法的に活用されてきました。
社会保険料削減スキームが合法であることは、制度や構造上の問題でもあり、ルールの範囲での削減スキームともいえます。
しかし、最近になって、厚生労働省が見直しに着手しています。
この背景には、「年収1200万円の人が、通常ならばかなり高額の社会保険料を支払うべきところ、
毎月の給与を低く抑えているためにほとんど社会保険料を払っていない」という不公平な状況が指摘されています。
令和6年9月30日に行われた厚生労働省の第183回社会保障審議会医療保険部会です。
ここでは、経営者や他の役員の場合として
「報酬を極端に低く設定し、高額な賞与を支給しているケースが存在する」
と具体的に問題視されはじめています。
社会保険料削減スキーム終了による備え
このように、経営者やその他の役員が活用していた社会保険料削減スキームが有効ではなくなる可能性が高まっています。
具体的には、ボーナス(役員賞与=事前確定届出給与)にかかる社会保険料の上限額が引き上げられることや、
月給(役員報酬=定期同額給与)を極端に低く設定している場合を是正する方向で議論が進んでいます。
この見直しが行われると、社会保険料削減スキームが有効ではなくなり、
結果として、会社と役員ともに社会保険料の負担が大幅に引き上がります。
よって、社会保険料削減スキームがいつ終了するのかを注視する必要があり、
スキーム終了後には、役員給与(役員報酬や役員賞与)の在り方を抜本的に見直し、
選択型DCを活用することで、社会保険料の負担が大幅に引き上がることに対応するなど、
事前に検討しておくことが望ましいともいえます。
それでは、いつから見直されるのか?
見直しがいつ実施されるかについては、現段階では確定していませんし、実施されること自体が確定ともいえません。
しかし、審議会での議論が進んでいることは事実です。
社会保険料や厚生年金の財源不足が指摘されていることもあり、
政府には迅速な対応が求められることも事実であるといえます。
これらを踏まえ、社会保険料削減スキーム終了による備えを、
税理士や社会保険労務士などの専門家と、事前に議論しておくことが望ましいといえます。
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企業の業務効率性向上だけではなく、経営者個人やその親族の資産形成の最適化も追究しています。