「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を聞くと、「大企業の話で、うちのような中小企業には関係ない」「莫大な費用がかかりそう」「そもそも何から手をつけていいか分からない」と、諦めてしまっていませんか?
しかし、DXは決して遠い世界の話ではありません。むしろ、人手不足や生産性向上が喫緊の課題となっており、実際に中小企業白書2023でも、DXによる業績改善の事例が多く紹介されています
このコラムでは、中小企業でDXが進まないよくある原因を深掘りし、あなたの会社がDXを成功させるための具体的なポイントを分かりやすく解説します。
【監修:税理士・中小企業診断士 前田 直樹】
目次
- 1.「DX、うちには無理…」と諦める前に知ってほしいこと
- 2.中小企業のDXが失敗する、よくある5つの「つまずきポイント」
- 3.【DX成功へのポイント①】目的の明確化:何のためにDXをやるのか?
- 4.【DX成功へのポイント②】スモールスタート:課題の洗い出しとツール選定
- 5.【DX成功へのポイント③】社内への浸透:全社を巻き込むための工夫
- 6.【税理士が解説】DX推進を成功に導くための外部リソース活用術
- 7.DXは「導入」でなく「旅」。計画的な一歩を踏み出そう
- 8.DX推進・経理DXでお悩みなら、まずは無料相談へ
1:「DX、うちには無理…」と諦める前に知ってほしいこと
多くの経営者様が、DXを「最新のITシステムを導入すること」や「大規模な業務改革」と捉えがちです。しかし、DXの本質は、デジタル技術を活用して、企業文化やビジネスモデルそのものを変革し、競争優位性を確立することにあります。
決して大企業だけのものではありません。むしろ、フットワークの軽い中小企業こそ、以下のようなDXの恩恵を享受できます。
- 業務効率の大幅な改善: 手作業や紙ベースの業務を自動化・デジタル化し、社員の負担を軽減します。
- コスト削減: 無駄な作業や紙・印刷コストを削減し、経営を圧迫する固定費を見直せます。
- 生産性の向上: 効率化によって生まれた時間を、より創造的で付加価値の高い業務に充てられます。
- 人材不足の解消: 業務効率化により、少ない人数でも業務を回せるようになり、採用難の解決に繋がります。
- 新しい顧客体験の創出: デジタル技術を活用し、顧客との接点を増やし、新たなサービス提供が可能になります。
中小企業庁が推進する「中小企業DX推進計画」のように、国も中小企業のDXを後押ししています。この波に乗るか否かで、企業の未来は大きく変わるでしょう。
2:中小企業のDXが失敗する、よくある5つの「つまずきポイント」
なぜ多くの企業がDXの重要性を認識しながらも、推進に失敗してしまうのでしょうか。よくある「つまずきポイント」を知り、自社が陥りやすい罠を事前に把握しましょう。
- 目的が不明確:ITツール導入がゴールになってしまう
- 「とりあえず最新ツールを入れればDX」といった誤解から、導入したものの使いこなせず、結局費用だけがかさんでしまうケースです。何のために、どのような課題を解決したいのか、明確な目標設定ができていないと失敗します。
- 経営者のコミットメント不足:DXを「現場任せ」にしてしまう
- DXは全社的な取り組みです。経営者がリーダーシップを発揮し、DXのビジョンや重要性を社員に伝え、強力に推進しなければ、現場は動かず、計画は頓挫します。
- 既存業務への固執:変化への抵抗が大きい
- 長年の慣習や、紙ベースの業務フロー、特定の社員への業務集中(属人化)など、既存のやり方に固執し、デジタル化への変化を嫌う抵抗勢力がいると、DXは進みません。
- IT人材の不足:DX推進を担う人材がいない
- DX推進には、デジタル技術への知見を持ち、社内外を調整できる人材が不可欠です。しかし、中小企業では専門人材の確保が難しく、これが大きな障壁となることがあります。
- スモールスタートの失敗:最初から大規模な導入を目指す
- 「全てを一度に変えよう」とすると、膨大なコストと時間がかかり、失敗した際のダメージも大きくなります。小さな成功体験を積み重ねる「スモールスタート」が重要です。
【特に経理部門で陥りがちな落とし穴】
経理部門は、中小企業におけるDXの「盲点」となりがちな領域です。特に以下のような「つまずきポイント」が散見されます。
- 依然として紙ベースの業務が主流:
- 請求書、領収書、伝票など、多くの書類が紙のまま処理・保管されており、検索や共有に時間がかかっています。デジタル化への移行を怠ると、情報の一元化が進みません。
- 変化への抵抗とアナログな承認プロセスの継続
- DXが進まない背景には、システムの問題だけでなく、人の意識や慣れといった心理的な側面も大きく影響します。この表現は、人の問題とプロセスの問題を両方捉え、より多角的な視点から課題を提起できます。
- 業務の属人化:
- 特定のベテラン社員に経理業務が集中し、その社員が不在の際に業務が滞ったり、後任への引き継ぎが困難になったりするケースが多々あります。DX化による標準化・共有化が急務です。
これらの落とし穴に気づき、対策を講じることが、経理DX成功の第一歩となります。
3:【DX成功へのポイント①】目的の明確化:何のためにDXをやるのか?
DX成功の鍵は、「何のためにDXを行うのか」という目的を明確にすることです。単に「最新の会計ソフトを入れる」ことが目的ではありません。
例えば、以下のように具体的な目的を設定しましょう。
- 経理業務の残業時間を月〇時間削減する
- 月次決算を〇日短縮し、経営判断をスピードアップする
- 紙の書類を〇%削減し、保管コストと探す時間をなくす
- 顧客データの一元化で、よりパーソナルなサービスを提供し、顧客満足度を〇%向上させる
これらの目的が明確であれば、導入すべきツールや取るべきステップが自ずと見えてきます。経営層がこの目的を明確に設定し、全社員に共有することが、DX推進の原動力となります。
4:【DX成功へのポイント②】スモールスタート:課題の洗い出しとツール選定
DXは一足飛びに全てを変える必要はありません。まずは小さく始めて成功体験を積み重ね、それを横展開していく「スモールスタート」が成功の近道です。
経理DXから始めるスモールスタートのすすめ
中小企業にとって、DXの第一歩として「経理部門のDX」から始めるのは非常に有効な戦略です。経理業務は定型作業が多く、デジタル化による効果が目に見えやすいため、成功体験を積みやすく、全社的なDX推進への弾みとなります。
例えば、以下のような経理DXが考えられます。
- 請求書・領収書のペーパーレス化とデータ化
- 経費精算のオンライン化
- 会計ソフトのクラウド化による自動仕訳
- 給与計算業務の効率化
これにより、業務効率化やコスト削減といった目に見える成果が得られ、他の部門へもDX推進の波及効果が期待できます。
最適な会計・経理ツールの選び方
スモールスタートの成功には、自社の課題に合った最適なツールの選定が不可欠です。特に経理DXにおいては、クラウド会計ソフトがその中心となります。
ツール選定の際は、以下のポイントを重視しましょう。
- 自社の規模と業種に合っているか: 無料プランから高機能プランまで、自社の成長段階に合わせた選択肢があるか。
- 使いやすさ(UI/UX): 経理担当者だけでなく、現場の社員も抵抗なく使える直感的な操作性か。
- 既存システムとの連携性: 販売管理ソフト、給与計算ソフト、POSシステムなど、既に導入しているシステムとの連携が可能か。
- サポート体制: 導入後のサポート体制は充実しているか。困ったときにすぐに相談できる窓口があるか。
- セキュリティ: データ保護のためのセキュリティ対策が十分に講じられているか。
クラウド会計ソフトでは、「freee会計」や「マネーフォワードクラウド会計」などが代表的です。これらのツールは、自動仕訳機能や銀行口座・クレジットカードとの連携、請求書発行機能などを備え、経理業務を大幅に効率化できます。
5:【DX成功へのポイント③】社内への浸透:全社を巻き込むための工夫
どんなに素晴らしいDX計画やツールを導入しても、社員が使いこなせなければ意味がありません。DXを全社的に成功させるには、「社内への浸透」が不可欠です。
- DXのビジョンと目的の共有: 経営者から「なぜDXが必要なのか」「DXによって何を目指すのか」を繰り返し伝え、社員の理解と共感を得ましょう。
- 段階的な導入とトレーニング: 一度に全てを変えるのではなく、まずは一部の部署や業務から段階的に導入し、実際に手を動かしながら使い方を習得する機会を提供します。動画マニュアルやQ&A集の作成も有効です。
- 成功体験の共有: 小さな成功事例でも社内で積極的に共有し、「DXで業務が楽になった」「こんなメリットがあった」といったポジティブな声が広がるように促しましょう。
- トップ層の率先垂範: 経営者や役員自らが新しいツールやシステムを積極的に活用する姿勢を見せることで、社員の意識も変わっていきます。
- 意見を吸い上げる機会の創出: 社員からの疑問や改善提案を受け付ける窓口を設け、積極的にフィードバックを吸い上げ、改善に活かすことで、当事者意識を高めます。
社員一人ひとりが「自分ごと」としてDXを捉え、前向きに取り組めるような環境づくりが成功の鍵です。
6:【税理士が解説】DX推進を成功に導くための外部リソース活用術
中小企業では、「DX推進のための専門人材がいない」「日々の業務が忙しくてDXに割く時間がない」といった課題に直面しがちです。このような時こそ、外部の専門家の力を借りることが、DX成功への近道となります。
経理DX推進で税理士に相談すべき理由
なぜDX推進、特に経理DXにおいて税理士が力になれるのでしょうか?
- 会計・税務の専門知識: DXによって会計処理や税務申告の方法が変わる際に、法改正(電子帳簿保存法やインボイス制度など)に則した適切な対応をサポートできます。
- 業務プロセスの可視化と最適化: 経理業務の全体像を把握し、どこに非効率な点があるか、どの部分をDX化すべきかを客観的に分析し、最適なフローを提案できます。
- 最適なツールの選定支援: 特定のツールに偏らず、貴社の業種や規模、課題に合わせた最適なクラウド会計ソフトや経費精算システムなどを提案し、導入を支援します。
- 導入後の運用サポート: ツール導入後の初期設定や、社員への使い方指導、トラブル発生時のサポートまで、伴走型で支援します。
- 補助金活用のサポート: DX推進に活用できるIT導入補助金などの情報提供から、事業計画書の作成、申請手続きまで、税理士が専門知識でサポートできます。
税理士は、単に帳簿をつけたり申告をするだけでなく、貴社の経営をITとDXの側面から強くサポートできる存在です。
https://1021-keiri.com/column/14894924/
「DXはしたいがリソースがない…」そんな時に検討したい経理代行
「DXの重要性は理解できたけれど、日々の業務で手いっぱいで、推進する時間も人手もない…」
もし貴社がそうお考えなら、経理代行サービスの活用をご検討ください。
経理代行は、DX推進のためのリソース確保だけでなく、以下のような大きなメリットをもたらします。
- 経営者が本業に集中できる: 経理業務をアウトソースすることで、経営者様は本来の業務である事業戦略立案や顧客開拓に集中できます。
- 専門家による正確で効率的な処理: 最新の税法や会計基準に精通した専門家が経理業務を代行するため、ミスが減り、常に正確な処理が保証されます。
- 人材不足の解消: 経理担当者の採用・育成コストや労務管理の負担を軽減し、人材確保の悩みを解決します。
- コスト削減: 経理部門を社内に持つよりも、人件費や教育費、システム維持費などを削減できる場合があります。
- スムーズなDX推進基盤の構築: 経理代行サービスによっては、クラウド会計システムの導入・運用支援も含まれるため、無理なくDX化を進める土台を築けます。
DXはしたいけれど、社内のリソースが限られている中小企業にとって、経理代行はDX推進を現実のものとする強力な一手となり得るのです。
7:DXは「導入」でなく「旅」。計画的な一歩を踏み出そう
DXは一度システムを導入したら終わり、というものではありません。時代の変化や技術の進化に合わせて、常に改善と最適化を続けていく「旅」のようなものです。
この「旅」に計画的な一歩を踏み出すことが、中小企業の持続的な成長には不可欠です。ご紹介した「目的の明確化」「スモールスタート」「社内への浸透」、そして「外部リソースの活用」を実践し、貴社に合ったペースでDXを進めていきましょう。
8:DX推進・経理DXでお悩みなら、まずは無料相談へ
「自社に合ったDXの進め方が分からない」 「経理部門のDXをどう進めたら良いか悩んでいる」 「DXに割ける人材や時間がないので、経理業務をプロに任せたい」
もし、このようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
テントゥーワン経理代行サービスは、40年以上の実績の中で、顧客継続率99%超、税務調査の申告是認63.9%を誇る専門家集団として、お客様に寄り添ってきました。
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①税理士・社労士・中小企業診断士・IT専門家などで構成する約50名のスタッフがチームで対応
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