「うちの会社にも、もっとできる節税があるんじゃないか?」

そう思いながらも、税理士任せにしていたり、制度が難しくて一歩踏み出せなかったりする方も多いのではないでしょうか。
節税と聞くと、「ズルをすること」「専門家しか使えない裏ワザ」といった誤解がつきものですが、実際には合法的で有効な制度が数多く存在します。
特に法人は、退職金・保険や共済・社宅・旅費規程など、多彩な手段を戦略的に組み合わせることで、何十万円単位の節税も十分に可能です。
ただし、近年のインボイス制度や電帳法などの制度改正により、「古いやり方」では通用しない時代にもなってきています。
そこで今回は、法人が合法的に使える節税テクニック15選を比較形式で徹底解説。さらに、失敗による税務否認のリスク、最新制度への対応ポイントまで、わかりやすくお伝えします。

目次

第1章:法人節税の基本とは?実務経験を踏まえた前提解説

節税と脱税の違いを実例で整理

節税とは、法律に則って納税額を適正に抑えることです。一方で、脱税は明確な違法行為であり、たとえば以下のような違いがあります。

節税の例 脱税の例
小規模共済に加入して所得控除 架空経費を計上して利益を減らす
社宅制度を使い一部家賃を経費処理 私的な支出を経費に見せかける

なぜ法人は個人事業主より節税しやすいのか?

法人は、個人事業主に比べて以下のような節税手段が多く用意されています。

節税項目 法人 個人事業主
退職金 損金算入できる 制限あり
保険の損金処理 商品選択の幅が広い 制限あり
旅費規程 規程整備で非課税処理 制限あり
福利厚生費 社員向け制度多数あり 制限あり

事業成長期設立から5年以内の中小法人ほど「制度を知らずに損していた」というケースが多い傾向があります。

インボイス・電帳法で「知らないと損する時代」に

制度が変わったことで、「以前はOKだった処理が、今は否認される」例も増えています。

  • インボイス制度:非登録業者との取引で、消費税控除ができないリスク。
  • 電子帳簿保存法(電帳法):電子取引データを紙保存しただけでは原則NGに

つまり、「経費処理が正しくできない=節税ができない」という構図ができつつあるのです。

専門家の設計と事前相談が鍵になる

特に節税額が大きくなる場合ほど、「やってはいけないライン」との距離も近くなります。
そのため、経営者仲間から聞いただけ、ネットで検索しただけ、など制度を正しく理解せずに対応した結果、税務否認されてしまうケースも少ないとはいえません。こうならないように自社の目的に合わせて打ち手を選び、あるべき形式と実態を伴わせることが重要です。

次章では、法人が使いやすく効果的な節税施策15選を、比較形式でわかりやすくご紹介します。

節税施策15選を徹底比較!【定番〜応用まで】

法人の節税には、制度上さまざまな選択肢があります。ただし、どれが自社に合っているのかは、業種・利益水準・将来の見通しによって大きく異なります。
そもそも節税は利益を少なくすることです。利益を少なくするということは、それだけ経費が増加することであって、過度な節税は無駄遣いともなり、経営を圧迫するような本末転倒ともいえる結果にもなり得ます。
自社にとって本当に必要な打ち手が何かを正しく選択することが、節税成功のカギです。

この章では、実際に中小企業で導入実績の多い節税施策15個をご紹介します。

① 役員報酬

相談頻度No.1。どの視点で最適化を考えるべきか

税理士に寄せられる代表的な相談の一つが「役員報酬をいくらに設定すべきか」です。報酬が高すぎれば所得税が増え、低すぎれば法人の利益が膨らみ法人税が重くなる。絶妙なバランスをとる必要があります。

<ポイント>
原則として、期首から3ヶ月以内に報酬を決める必要があるため、決算直後に検討と決定が必要です。安易に、法人税を支払う必要がない程度に役員報酬を設定することもありますが、これはNG。法人と役員個人とを通じて税負担が最適化されているかという視点も欠かせません。
また、役員報酬は法人の経費であって、役員報酬が高額であることから、法人の利益が薄くなることは、経営にとってプラスになるとは限りません。
さらには、法人から役員個人に利益を移転する方法には、役員報酬だけではなく、役員退職金という手段もあります。
法人と役員個人の「いま」だけを最適化させるのではなく、「将来」の最適な資産形成も考慮して、あるべき役員報酬を検討する必要があります。

②社宅

家賃の半分以上を経費処理している社長も

個人で支払っている住居費を、法人契約にすることで経費化できる制度。毎月8万円の賃貸物件を社宅に切り替え、5万円以上を経費処理して節税に成功したケースなどもあります。

<ポイント>
法人が負担すべき経費である以上、その根拠が重要です。法人契約又は所有の社宅であるのか、社宅規程はあるのかなど、適切な対応が求められます。また、税務上の賃貸料相当額を正しく計算することで、法人で経費計上するとともに、個人で所得として課税されないように設計する必要があります。

③小規模企業共済

経営者の退職金を自分で積み立て、全額所得控除

「社長が引退するときの退職金、どう用意しますか?」に対する国の制度的回答がこれ。掛金は月額1,000円〜7万円、全額が所得控除扱い。
「制度を知らずに何年も損していた」という声が非常に多いのがこの共済です。老後資金の蓄えという点から、iDeCoと併用されるケースも多く見られます。また、社会保険負担削減という点を絡め、iDeCoよりも優位となる選択制DCを採用する企業も増加しています。

④倒産防止共済(経営セーフティ共済)

万が一の取引先倒産に備えつつ、年間240万円を損金処理

経営者のリスクマネジメントと節税を両立できる制度です。実際、年間240万円まで掛金を損金算入できるインパクトは大きく、節税対策として有効です。

<ポイント>
倒産防止共済は、経費になる拘束預金だと理解すると分かりやすいです。元本については、40か月以上、共済を継続すれば、その後に共済を解約することで、掛金の全額が元本割れなく戻ってきます。
注意すべきは、掛金がしばらくの間は使えないこと(資金繰りに影響があること)、掛金を支払うときは全額が経費になるものの、解約時には全額が収入になることです。解約のタイミングを間違えると、思わぬ税負担が発生します。そのため、解約は、経営状況が悪化して赤字となっているとき、役員退職金を支払うとき、などに行うべきです。このような背景から、倒産防止共済は、役員退職金の外部積立として利用されることも多いといえます。

なお、倒産防止共済の掛金は、会計(決算書など)では経費とせず、税務だけ経費(損金)とすることができます。つまり、決算書(損益計算書)を痛めることなく節税ができる利点もあります。

⑤ 法人契約の生命保険

保険=節税は過去の話? 最新ルールを正しく使えば今も有効

かつては全損保険での節税がブームになりましたが、税制改正により内容はかなり限定されました。とはいえ、事業保障・退職金準備としての位置づけで、適切に設計すれば今も十分活用可能です。

<ポイント>
解約返戻金のピークを定期的にチェックしましょう。ピークが到来していることに気が付かずに、解約返戻金が知らず知らずのうちに少なくなっていることもあります。
また、ピークが到来していることに気付き、慌てて解約しようとしても、解約益が発生することで、思わぬ税負担につながることもあります。
そもそも保険は何のために契約したのか、解約という出口をどう設計しているのかなど、定期的なメンテナンスが不可欠です。

⑥ 福利厚生費

懇親会・慰安旅行などの社内行事も全て経費にできる?

福利厚生費は、上手く使えば社内の満足度向上と節税を同時に実現できます。月1回のランチ会や、家族手当を支給している企業もあります。

<ポイント>
特定の役員や労働者だけを対象とするような経費や、社会通念を逸脱するような経費は、役員の私的経費として税務否認され、または従業員本人に対する給与として課税されるリスクがあります。
福利厚生の性格として、従業員の全員に参加機会があり、その実態が記録として保存されているのかが肝です。つまり、説明がつかない・極めて高額な経費に至るまで、何でもかんでも福利厚生という考え方にリスクがあります。

⑦ 決算賞与

「直前に賞与を出して節税できる」は本当

利益が読めてきたタイミングで、決算月に賞与を支給すれば、当期に損金処理できます。
ただし、決算で未払いとする場合には、3条件(通知・確定・支給)が揃っていないと損金扱いできません。さらには、賞与にかかる法定福利費も当期の損金となりません。
そのため、あらかじめ決算を見通し、少なくとも決算月には、実際に賞与を支給することが望ましいといえます。このときには、賃上げ促進税制でどれだけ税額控除ができるのか、も併せて検討すべきである、といえます。
税金を支払うぐらいなら、それよりも先に現場で活躍している従業員に還元を、という思想をお持ちの経営者が多い印象です。

⑧ 日当

日当という“非課税の手当”を作る制度

出張時にかかる日当を、社内規定に基づき非課税で支給することで、給与課税を避けられます。つまり、法人では経費となり、個人では所得にならないのが日当の特長です。
とはいえ、日当にも相場があり、いくらであっても認められるものではありません。
また、合理的な理由なく、役員など特定の者だけに日当を支給することはNGであり、出張などの実態がないことは絶対にNGです。

⑨ 不良在庫

不良在庫を見直して節税

売れ残った在庫の価値が落ちている場合、まずは決算月内に実際に処分することを考えることが有効です。処分の方法には値引販売なのか、廃棄するのかという選択肢があります。
損失を顕在化させて翌期に持ち越さないこと、そもそも在庫はお金ではあるものの、在庫を持つことにも経費がかかります。であれば、思い切って損切して、せめて節税の具にするという考え方にも一理あるといえます。
また、棚卸資産の評価を「低価法」によるという選択肢もあります。このときには、いくらを評価損とするのか、その評価損は妥当であるのか、について説明ができる資料を保存しておく必要があり、これが十分でない場合には、税務調査で指摘を受けることもあります。

⑩ 役員退職金

役員退職金で、法人税、所得税、相続税(自社株評価)を圧縮

役員退職金は、何度も切れるカードではないものの、一時的に法人の利益を大きく圧縮し、かつ、自社株評価を大きく引き下げる余地のある経費です。
役員退職金には計画性が求められ、いつ・何を原資に支払うのか、を事前に考える必要があります。
不相当に高額な役員退職金は法人の損金としては認められません。他方、不相当に高額な役員退職金であっても、原則として、これを受け取る役員個人ではその全額が退職所得となり、役員報酬と比べると税負担が低くなります(50%以下の負担)。
役員就任期間が5年以下である場合や、5年以内に役員退職金を関連会社から受け取っている場合には、役員個人の税負担が重たくなる場合があることに注意が必要です。
また、役員退職金の分割支給という打ち手もあり、決算書に与える影響を考慮しながら、その支払方法や経費計上のタイミングにも工夫の余地があります。

⑪ 中小企業経営強化税制

設備投資で当期の利益を大幅圧縮

中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、対象設備の取得や製作等をした場合に、即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超の法人は7%)が選択適用できるものです。
そもそも、いま予定してる設備が、優遇税制の対象になるのかを、購入前の段階から視野に入れて検討、事前にすべき手続きに洩れがないように注意する必要があります。

⑫ 中小企業投資促進税制

機械導入・設備購入が多い業種向けの特別制度

対象機器の購入で30%即時償却または7%の税額控除が可能。対象範囲と期間の確認が必要ですが、リース契約やIT導入補助金とも組み合わせも可能です。
ソフトウェアはその事業年度の合計金額で適用判断をする点、一定の車両運搬具もこの制度の対象となる点、検討や摘要洩れがないかに注意が必要です。

⑬ 賃上げ促進税制

攻守を兼ね備えた優遇税制

中小企業者等が従業員の給与支給額を前年度より増加させた場合、その増加分に応じて法人税または所得税から一定額を控除できる制度です。
教育訓練費や女性活躍等の上乗せ措置もあり、控除率は最大で45%となります。
また、法人税額の20%までが当期控除額の上限であるところ、控除しきれない金額は最長5年にわたり繰り越して控除できます。
企業経営にとって重要な人材への投資が、そのまま節税にもつながるという攻守を兼ね備えた優遇税制のひとつです。

⑭ 研究開発税制の活用

新しい商品・システムの開発で税額控除

試験研究費の一部を法人税から直接控除できます。書類整備はやや手間となる場合もありますが、税額控除という性格から節税効果は高いといえます。
税額控除の対象となる試験研究費の範囲は明確に示されているものの内容が複雑であることもあって、税額控除の検討そのものが洩れている場合も多いといえます。

⑮ 企業版ふるさと納税

社会貢献しながら節税もしたい

そんな企業に注目されているのが「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」です。
この制度は、企業が地方自治体の地方創生プロジェクトに寄付することで、寄付額の約9割が法人税などから軽減される仕組み。損金算入に加えて最大6割の税額控除が受けられるため、実質負担は1割程度に抑えられます。
たとえば、人口減少対策や地域産業の育成など、社会的意義のある事業への支援を通じて、SDGsへの取り組みや企業のブランド向上にもつながります。また、人材派遣型の寄付では、地域課題の現場で社員が活躍することで人材育成の機会にもなります。
注意点として、返礼品などの見返りはなく、本社がある自治体には寄付できません。しかし、それを補って余りあるのが、地域とつながる新たな価値と、企業としての存在感です。

地域の未来に投資しながら、企業価値を高める。それが、企業版ふるさと納税の魅力です。つまり、実質負担1割で企業のブランディングができる、という点から、節税の打ち手のひとつとなり得ます。

節税の成否を分ける「3つのポイント」

分かれ道 成功した企業 失敗した企業
書類の整備 契約書・規程が万全 記録が曖昧 又は不備がある
税理士との連携 計画段階から相談 事後報告・独断実行
制度の理解 目的・仕組みを理解 仕組みを知らずに利用

税制改正・電帳法対応に見る「これからの節税戦略」

2023年のインボイス制度、2024年の電子帳簿保存法(電帳法)義務化。
近年の税制改正は、経理や節税の「当たり前」を大きく塗り替えています。

ここでは、節税を「過去の常識」で行うリスクと、今後の経営に必要な“制度対応力”を踏まえた節税戦略を整理します。

インボイス制度と外注費の再考

2023年10月から始まったインボイス制度は、節税においても大きな転換点です。

  • 背景:消費税の仕入控除を適用するためには、「適格請求書(インボイス)」の保存が必須に
  • 問題点:非登録事業者との取引では、経過措置があるとはいえ消費税控除が制限され、実質的に経費が高くなる事態も

電子帳簿保存法(電帳法)と“証憑の透明性”

2024年1月から本格スタートした電帳法義務化。
特に「電子取引(メール・PDF請求書など)」は、紙保存が原則NGとなり、電子での保存+検索性+タイムスタンプなどが必要条件になりました。

節税への影響

  • 領収書が形式不備で「経費にできない」例もある
  • 電帳法非対応で、調査時に“故意の経費隠し”と疑われるケースもあり得る

税制改正動向(2025年以降)を踏まえた3つの視点

電子化・可視化への対応が“前提”に

国税庁も明言しているように、「電子帳簿・電子取引が当然」という方針は今後も続きます。
クラウド型会計ソフト/電子請求書/経費精算ツールの整備は、節税だけでなく税務調査対策にも必須です。

中小企業向け優遇制度の活用余地

近年、整備・拡充された以下の税制は、「使えるなら即使うべき」枠です。

  • 中小企業経営強化税制
  • 中小企業投資促進税制
  • 研究開発税制
  • 賃上げ促進税制
  • 企業版ふるさと納税

補足:優遇制度は年度ごとの改正で細かく変わるため、税理士による“タイミング判断”が重要です。

曖昧な処理が“否認されやすくなる”時代

過去のような“グレーゾーン”は減りつつあります。

  • 私的経費との線引きがあいまいな経費 ➡ 事業上必要だと判断できる証拠がなければ否認される
  • 日当や役員退職金をはじめ、規程など形式的根拠がない経費 ➡ 経費となる根拠がなければ否認される

“とりあえずやっておけば”では通用しません。目的・証拠・ルールの3点セットが問われる時代に変化してきています。

これからの節税戦略:やるべき5つのアクション

優先度 対策 ポイント
★★★★★ 会計ソフト・証憑管理のクラウド化 電帳法対応、証憑ミスの撲滅
★★★★☆ インボイス対応チェック 登録番号の有無、取引見直し
★★★★☆ 経費処理ルールの明文化 規程+チェックリスト運用
★★★☆☆ 税制優遇制度の定期見直し 制度改正を年1回は確認
★★★☆☆ 顧問税理士との月次レビュー 思いつき実行を防ぐ伴走体制

第4章:今すぐ使える節税施策と最初にやるべきこと

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