令和7年度税制改正
令和7年度税制改正の背景と目的
労働市場の変化と税制改正の必要性
日本社会における労働力不足は年々深刻化しています。
とくに若年層や主婦層の労働市場参入を促進するための施策が求められてきました。
これまで、税制が、働く意欲を阻害する要因の一つとして指摘もされてきたところです。
たとえば、所得税が課税される基準である「年収103万円の壁」は、
多くの人々にとって労働時間や収入を調整する制約となり、労働参加率の向上を妨げてきたともいえます。
このような課題を解決するため、令和7年度税制改正大綱では、給与所得控除と基礎控除の引き上げが打ち出されました。
これにより、課税最低限を引き上がり、とくにパートタイムやアルバイトとして働く人々が、
これまでと比較して収入上限を気にせず、労働市場に参加できる環境が整備されます。
この改正は、労働力不足の解消や経済の活性化に向けた一歩として重要であるといえます。
新たな特定親族特別控除(仮称)の狙い
新たな特定親族特別控除(仮称)の大きな狙いは、所得格差の是正と労働市場の柔軟化です。
従来、学生が一定以上のアルバイト収入を得た場合、親の扶養控除が失われるという問題がありました。
これにより、学生が収入を制限する「就業調整」を余儀なくされ、
労働市場全体の活力が損なわれる状況が続いていました。
この問題に対応すべく、新たに「特定親族特別控除(仮称)」が導入されます。
この制度は、学生の収入に応じて段階的に控除額を設定することで、親の税負担が急激に増加しない仕組みが整います。
たとえば、学生がアルバイトで得た収入が一定の範囲内であれば、
親が引き続き税制上の優遇を享受できるように設計されています。
この新たな制度は、学生が収入上限を気にせず働ける環境を整えるだけでなく、
税制の公平性を向上させることも狙いとしています。
これにより、税負担の急増を防ぎつつ、若年層の労働市場参加を促進し、経済全体の活性化につなげることが期待されます。
給与所得控除と基礎控除の引き上げがもたらす影響
控除額変更の詳細
令和7年度税制改正では、以下のような控除額の変更が行われます。
①給与所得控除
現行:最低55万円 改正後:最低65万円
②基礎控除
現行:48万円 改正後:58万円(合計所得金額が2,350万円以下の場合)
これにより、課税最低限が103万円から123万円に引き上げられ、
「年収103万円の壁」が突破されることとなります。
これにより、主に学生や主婦が労働市場に参加しやすくなることが期待されています。
年収103万円の壁突破の意義
年収103万円の壁は、所得税が課税される基準点として、
長年にわたり多くの人々にとって労働時間調整の指標となってきました。
この壁が123万円に引き上げられることで、とくにパートやアルバイトで働く人々が、
これまでと比較して収入上限を気にせず働ける環境が整います。
これにより、個人の労働意欲が高まり、ひいては労働力不足の解消にもつながるでしょう。
適用時期とその影響
これらの改正は令和7年分以後の所得税から適用されます。
ただし、源泉徴収義務者の負担に配慮するという観点から、改正は令和7年分以後から適用されるものの、
給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)及び賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表の改正については、
令和8年1月1日以後に支払うべき給与等について適用されます。
よって、令和7年の給与計算業務に直ちに影響するものではありませんが、
令和7年分の年末調整では多くの方々が還付となることも想定されます。
また、令和8年1月1日以後は、源泉徴収すべき金額を見直す必要があることから、
少し先の対応とはなりますが、事前に準備を進める必要があるといえそうです。
特定親族特別控除(仮称)の導入とその効果
学生アルバイト(子供)と親の税負担
現在、大学生が一定以上のアルバイト収入を得た場合、
親が享受している扶養控除が適用されなくなるケースが一般的です。
この結果、学生は収入を抑える「就業調整」を行う傾向にあります。
特定親族特別控除(仮称)では、学生の収入に応じて段階的に控除額が設定され、
親の税負担が急激に増加しない仕組みが整備されます。
控除額の段階的設定と公平性の向上
具体的な控除額は以下のとおりです。
親族等(子供)の合計所得金額 | 控除額 |
58万円超~85万円以下 | 63万円 |
85万円超~90万円以下 | 61万円 |
90万円超~95万円以下 | 51万円 |
95万円超~100万円以下 | 41万円 |
100万円超~105万円以下 | 31万円 |
105万円超~110万円以下 | 21万円 |
110万円超~115万円以下 | 11万円 |
115万円超~120万円以下 | 6万円 |
120万円超~123万円以下 | 3万円 |
この仕組みにより、収入増加と控除額の減少が段階的に進むため、
税負担の急激な変動が回避され、公平性が向上します。
企業が取るべき対応策
就業調整の緩和と労働力確保
税制改正により、パートタイムやアルバイトとして働く人々が、
これまでと比較して収入制限を気にせず労働時間を増やせる環境が整います。
この変化は、企業にとって人材確保の機会を広げることに直結します。
たとえば、税制改正の影響で主婦層や学生が労働市場に積極的に参加しやすくなる一方で、
企業間の人材獲得競争が激化する可能性が高まります。
これに対応するため、企業はたとえば以下のような施策を検討する必要があります。
①柔軟な働き方の導入
テレワークやフレックスタイム制の活用により、多様な働き方を提供する。
②福利厚生の充実
育児支援や通勤手当、研修プログラムの拡充で働きやすい環境を整える。
③労働環境の改善
職場内の快適性向上や業務の効率化に取り組む。
このような施策を通じて、企業には、改正税制のメリットを最大限に活かし、
労働力不足の課題を克服する基盤を築くことが求められます。
税制改正に伴う給与計算の調整
給与所得控除や基礎控除の引き上げにより、源泉徴収税額表や賞与に対する税額算出表が改訂されます。
この改訂に適切に対応するためには、企業側で次の対応が求められます。
①給与計算システムの更新
最新の税額表を反映したシステムアップデートが不可欠です。
とくにクラウド型システムを活用すれば、改正内容への対応が迅速に行えます。
②人事部門の教育
税制改正に関する研修を実施し、担当者が変更点を正確に理解できる体制を整備します。
③専門家のサポート活用
税理士や給与計算代行サービスを活用し、改正内容への的確な対応を図ります。
助成金を活用した企業競争力の向上
キャリアアップ助成金の活用法
「キャリアアップ助成金」は、
非正規雇用者(有期雇用、パートタイム、派遣社員など)の正社員化や処遇改善を目的とした助成金であり、
企業の人材戦略を支える重要な制度です。
この助成金は、主に以下のような取り組みに対して支給されます。
①正社員化コース
有期雇用労働者を正規雇用または無期雇用に転換する際に支給される助成金。
②賃金規定等改定コース
企業が賃金規定の改定や賃金アップを行い、労働条件を改善した場合に支給される助成金。
③スキルアップコース
対象者に対して職業訓練やスキル向上のための教育を実施する企業に支給される助成金。
たとえば、非正規雇用の従業員を正規雇用化し、
その後の研修や賃金アップを行うことで最大数百万円規模の助成金を受け取れるケースもあります。
この制度を活用することで、人材確保のコストを軽減しながら、労働力の安定確保と生産性向上を図ることができます。
税制改正を契機にした人材スキル向上
これから103万円の壁に変化が起きること、
既に賃上げ促進税制が大幅に拡充されていることなどの税制改正をきっかけに、
非正規雇用者の正社員化や処遇改善に取り組むことや、従業員のスキル向上に注力することは重要な戦略です。
たとえば、社内研修プログラムを拡充し、従業員の専門性を高めることで、生産性の向上と労働力の定着が期待されます。
また、キャリアアップ助成金の「スキルアップコース」を併用することで、教育訓練費用の一部を補填しつつ、
高度なスキルを持つ人材を育成する環境を整えることもできます。
スキル向上は、個々の従業員の満足度を高めるだけでなく、企業全体の競争力向上にも貢献します。
テントゥーワングループが提供する給与計算代行サービス
テントゥーワングループは、給与計算代行サービスを通じて、企業が制度改正にスムーズに対応できる環境を整備します。
社会保険労務士や税理士などの専門家が数多く在籍するテントゥーワングループでは、
クラウド型システムを活用して効率的で正確な給与計算を実現、
助成金申請や税制改正への対応といった給与計算業務のトータルサポートを提供しています。
とくに中小企業が、制度改正をリスクではなくチャンスとするために、適切な準備とシームレスな専門家支援が不可欠です。
テントゥーワングループの給与計算代行サービスで、制度改正に対応した新しい労働環境を整備し、
企業競争力を高めていきましょう。