インボイス特例の出張旅費等特例と公共交通機関特例とは

インボイス制度導入により、消費税の仕入税額控除を受けるために適格請求書(インボイス)の取得や保存が必要となっています。しかし、従業員の出張旅費等については、インボイス対応を簡略化できる「出張旅費等特例」が設けられ、インボイス対応の特例である出張旅費等特例を利用することで、インボイス対応の業務負担を大幅に軽減できる余地があります。出張旅費等特例を活用し、どのようにインボイス対応の効率化を図るのかを解説します。

企業が交通機関に出張旅費を直接支払う場合には、他の費用と同様にインボイス対応が必要です。ただし、3万円未満(消費税込)の公共交通機関利用については、出張旅費等特例とは別の「公共交通機関特例」でインボイス対応を簡略化できます。インボイス対応の特例である出張旅費等特例と公共交通機関特例とを比較してみましょう。

①適用範囲:

・出張旅費等特例:従業員の出張に関する幅広い経費(すべての交通手段、宿泊費、日当等)

・公共交通機関特例:公共交通機関(電車、バス、船舶)の利用料金のみ

②金額制限:

・出張旅費等特例:金額の制限なし(ただし通常必要と認められる範囲内)

・公共交通機関特例:1回の取引につき3万円未満(消費税込)

③支払方法:

・出張旅費等特例:企業から従業員に支払う(経費精算)

・公共交通機関特例:主に会社から公共交通機関に支払う

国税庁 インボイス制度における特例②(出張旅費等特例) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003138.pdf

出張旅費等特例を活用するための経費精算フローの見直し

出張旅費等特例と公共交通機関特例の比較から見る利便性

前述のインボイス対応の特例である出張旅費等特例と公共交通機関特例との比較から、出張旅費等特例の方が、①適用範囲が広く、②金額制限もなく、より便利な特例であることが確認できます。そこで、より便利な出張旅費等特例を活用するために、出張旅費の経費精算フローを見直してはいかがでしょうか。③支払方法のとおり、具体的なフローには、従業員による立替精算か、従業員への仮払精算のいずれかが考えられます。従業員による立替精算では、従業員が交通機関に対して出張旅費を支払って、後から企業が従業員に立替経費を支払います。従業員への仮払精算では、あらかじめ企業が従業員に仮払経費を支払います。従業員にとって、立替精算が後払い、仮払精算が先払いとなることから、従業員の立替負担の軽減という観点からは仮払精算の方が望ましいともいえます。なお、旅費規程がなくとも、出張旅費等特例は適用でき、インボイスの取得や保存なく、帳簿に特例を適用することを記載することで足ります。つまり、経費精算の業務フローを変更し、企業が交通機関ではなく、従業員に対して出張旅費を支払うことによって、企業の事務手続きが簡略化されます。この場合、給与振込と同時に経費精算を行うこともでき、さらなる効率化の余地もあります。

【フロー変更前】 会社➡(費用の直接払い)➡交通機関

【フロー変更後】 会社➡(立替又は仮払い)➡従業員➡(費用の間接払い)➡交通機関

効率的なインボイス対応のための特例の選択方法について

出張旅費等特例を活用するための経費精算フローの見直しには、インボイス対応の特例適用という効果だけではなく、業務効率化という根本的な効果も期待できます。従業員が立替えた旅費交通費などを日次や週次で、定期的かつアナログに経費精算する運用が少ないとはいえません。ある企業では、深夜に出張から帰ってきた従業員が、残業をしながら領収書を所定の用紙に貼り付けて経理担当者に提出、これを経理担当者が集計して翌営業日に小口現金で精算するようなルーティンがありました。弊社が関与して以降、このようなルーティンは、出張者にとっても経理担当者にとっても負担でしかなく、企業にとっても非効率で生産性のない手続きであることから、まずは、クラウドの経費精算システムを導入しました。さらに、月あたりの経費精算額が1万円以上となる従業員には仮払精算(先払い)を、その他の従業員には立替精算(後払い)とするルールを設け、仮払精算と立替精算ともに、給与振込とともに決済をするフローへと変更しました。この変更により、目に見えて、出張者の残業時間や残業手当が減少、さらにはペーパーレス化が進み、そして経費精算ミスも減少しました。

クラウドシステム導入による経費精算の効率化事例

経費精算フローの見直しには、インボイス対応の特例適用という効果だけではなく、業務効率化という根本的な効果も期待できます。従業員が立替えた旅費交通費などを日次や週次で、定期的かつアナログに経費精算する運用が少ないとはいえません。ある企業では、深夜に出張から帰ってきた従業員が、残業をしながら領収書を所定の用紙に貼り付けて経理担当者に提出、これを経理担当者が集計して翌営業日に小口現金で精算するようなルーティンがありました。弊社が関与して以降、このようなルーティンは、出張者にとっても経理担当者にとっても負担でしかなく、企業にとっても非効率で生産性のない手続きであることから、まずは、クラウドの経費精算システムを導入しました。さらに、月あたりの経費精算額が1万円以上となる従業員には仮払精算(先払い)を、その他の従業員には立替精算(後払い)とするルールを設け、仮払精算と立替精算ともに、給与振込とともに決済をするフローへと変更しました。この変更により、目に見えて、出張者の残業時間や残業手当が減少、さらにはペーパーレス化が進み、そして経費精算ミスも減少しました。

ブラックボックス化や属人化のリスク回避!経理業務フロー見直しの必要性とは

経理業務のブラックボックス化や属人化がもたらすリスクと課題

企業の経理業務が、ブラックボックス化し、経理担当にしかわからない属人化が進むと、業務リスクが増大します。この状況は、経理担当が退職や休職した場合、経理処理や決算業務が滞り、企業の経営にも深刻な影響を与えかねません。ブラックボックス化や属人化に陥った経理業務のフローには慣習性が高く、業務効率化のための変化や工夫が期待し難いことが現実ではないでしょうか。前述の例では、「残業をしながら領収書を所定の用紙に貼り付けて経理担当者に提出」という経費精算フローが、これにあたります。この経費精算フローは経理業務のフローの一端であるものの、残業してまで非効率で生産性のない作業をしたくないという従業員が、やがて退職という判断をすることもあり、経理担当を含む従業員の退職リスクすら孕む課題といっても過言ではありません。そこで、経理業務の透明性と効率化を高め、経理業務に潜むリスクを回避するためにも、経理業務のフロー見直しや経理代行の活用することも重要な経営判断の選択肢といえます。経理代行の活用、つまり経理業務を外部専門家にアウトソースすれば、経理業務のブラックボックス化や属人化のリスクはなく、経理業務のフローに慣習性もないことから、常に効率性の高いフローが運用されます。テントゥーワングループでは、システムエンジニアがクラウドシステムを導入、税理士法人による経理代行と、社会保険労務士事務所による給与計算を並走します。この効果の例として、前述の「従業員が立替えた旅費交通費などを日次や週次で、定期的かつアナログに経費精算する運用」という課題に対して、システム導入から経費精算(税務)と給与計算(労務)までシームレスに対応した結果、「目に見えて、出張者の残業時間や残業手当が減少、さらにはペーパーレス化が進み、そして経費精算ミスも減少」という効果が得られました。

実際のクラウドシステム導入事例と業務効率化

企業の経理業務が、ブラックボックス化し、経理担当にしかわからない属人化が進むと、業務リスクが増大します。この状況は、経理担当が退職や休職した場合、経理処理や決算業務が滞り、企業の経営にも深刻な影響を与えかねません。ブラックボックス化や属人化に陥った経理業務のフローには慣習性が高く、業務効率化のための変化や工夫が期待し難いことが現実ではないでしょうか。前述の例では、「残業をしながら領収書を所定の用紙に貼り付けて経理担当者に提出」という経費精算フローが、これにあたります。この経費精算フローは経理業務のフローの一端であるものの、残業してまで非効率で生産性のない作業をしたくないという従業員が、やがて退職という判断をすることもあり、経理担当を含む従業員の退職リスクすら孕む課題といっても過言ではありません。そこで、経理業務の透明性と効率化を高め、経理業務に潜むリスクを回避するためにも、経理業務のフロー見直しや経理代行の活用することも重要な経営判断の選択肢といえます。経理代行の活用、つまり経理業務を外部専門家にアウトソースすれば、経理業務のブラックボックス化や属人化のリスクはなく、経理業務のフローに慣習性もないことから、常に効率性の高いフローが運用されます。テントゥーワングループでは、システムエンジニアがクラウドシステムを導入、税理士法人による経理代行と、社会保険労務士事務所による給与計算を並走します。この効果の例として、前述の「従業員が立替えた旅費交通費などを日次や週次で、定期的かつアナログに経費精算する運用」という課題に対して、システム導入から経費精算(税務)と給与計算(労務)までシームレスに対応した結果、「目に見えて、出張者の残業時間や残業手当が減少、さらにはペーパーレス化が進み、そして経費精算ミスも減少」という効果が得られました。

日当規程の導入による負担軽減と賃上げトレンドへの対応方法とは

近年の賃上げ動向と日当支給の有効性

出張に際して日当を支給していない企業も、日当規程を新たに設け、日当を支給することも検討すると良いでしょう。日当が、所得税基本通達9-3に基づく「通常必要とされる費用」であれば、日当を受け取る従業員ではその日当に所得税や住民税、社会保険も課されず、日当を支払う会社では日当が費用(損金や必要経費)となり、出張旅費等特例によって消費税の仕入税額控除もできます。従業員にとっては課税されない手当(額面=手取)が増えることから、最近の物価高騰や賃上げトレンドを考慮すれば、一定額の日当を支給することも有効ではないでしょうか。なお、厚生労働省が毎年実施している「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」の令和 5 年(2023 年)の集計結果によれば、賃上げ率は 3.60%で、前年(2.20%)を上回り、コロナ禍前の令和元年(2.18%)も大きく上回っています。また、産労総合研究所が実施した「2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査結果」によると、国内宿泊出張における一般社員の日当の平均支給額は2,094円/日であり、社長であれば4,458円/日、取締役であれば3,613円/日が日当の平均支給額となっています。賃上げトレンドへの対応が日当で十分とは言い切れないものの、通常必要とされる費用の日当が「額面=手取」となることから、賃上げトレンドへの対応の打ち手のひとつになる場合もあり得ます。

日当平均額と賃上げへの影響を考慮した企業の対応策

出張に際して日当を支給していない企業も、日当規程を新たに設け、日当を支給することも検討すると良いでしょう。日当が、所得税基本通達9-3に基づく「通常必要とされる費用」であれば、日当を受け取る従業員ではその日当に所得税や住民税、社会保険も課されず、日当を支払う会社では日当が費用(損金や必要経費)となり、出張旅費等特例によって消費税の仕入税額控除もできます。従業員にとっては課税されない手当(額面=手取)が増えることから、最近の物価高騰や賃上げトレンドを考慮すれば、一定額の日当を支給することも有効ではないでしょうか。なお、厚生労働省が毎年実施している「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」の令和 5 年(2023 年)の集計結果によれば、賃上げ率は 3.60%で、前年(2.20%)を上回り、コロナ禍前の令和元年(2.18%)も大きく上回っています。また、産労総合研究所が実施した「2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査結果」によると、国内宿泊出張における一般社員の日当の平均支給額は2,094円/日であり、社長であれば4,458円/日、取締役であれば3,613円/日が日当の平均支給額となっています。賃上げトレンドへの対応が日当で十分とは言い切れないものの、通常必要とされる費用の日当が「額面=手取」となることから、賃上げトレンドへの対応の打ち手のひとつになる場合もあり得ます。

まとめ

出張旅費等特例を活用することで、インボイス対応の事務負担を軽減できるだけでなく、経費精算の効率化も図れます。さらに、日当支給を検討することで、物価高騰や賃上げトレンドにも対応し、従業員の実質的な所得向上も期待できます。この制度を最大限に活用し、事務作業の負担軽減と従業員へのメリットを提供していきましょう。システムエンジニアや税理士、社会保険労務士などが在籍するテントゥーワングループでは、クラウドシステムをもとに、経費精算フローを含む経理業務のフローを整理することで、業務効率化だけではなく、企業経営にとって「+α」となる付加価値の提供を追究しています。

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